すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


雄松崎(おまつざき)(滋賀県大津市)







琵琶湖八景
月明 彦根の古城
涼風 雄松崎の白汀
新雪 賤ヶ岳の大観
煙雨 比叡の樹林
深緑 竹生島の沈影
夕陽 瀬田・石山の清流
暁霧 海津大崎の岩礁
春色 安土・八幡の水郷




「雄松崎」は、琵琶湖八景の一つ「涼風 雄松崎の白汀(はくてい)」に選ばれた景勝地で、比良山を背景に白砂青松が続く。

一般的には「近江舞子」の地名で知られている。JRの駅も近江舞子駅。

琵琶湖八景は、広重の浮世絵で有名な近江八景とは別物。琵琶湖を巡る勝地佳景を集めたもの。昭和25年に選定。

琵琶湖八景は昭和の産物であるが、雄松崎の風趣に富んだ地景は往昔から都の歌人たちに知られており、多くの歌が詠まれた。

一方、雄松崎はもともと「小松(こまつ)が崎」と呼ばれていた。現在の地名も南小松。

常緑の「松」は長寿を意味するが、「小松」は子供の松のことで、さらに慶祝性が高いということから、小松の地は大嘗会和歌の歌枕としてよく詠まれている。




悠紀方御屏風
()の日して小松が崎を今日見れば(はる)かに千世の影ぞ浮かべる 藤原俊成

昔は正月の初めの「子の日」に外出して若い松の木を引き抜き不老長寿を祈願する宮廷儀礼があった。




寛治大嘗会屏風
小松原下行(したゆ)く水の涼しきに 千年(ちとせ)の数を(むす)びつるかな 大江匡房




正安大嘗会
(みどり)なる同じ双葉を引き添へて こまつが原に若菜をぞ摘む 大蔵卿隆教卿(夫木和歌抄)




二千代(ふたちよ)を重ねて譲れ君を祈る小松の里(つる)毛衣(けごろも) 正治初度百首




夕波や(しげ)く寄すらん近江路のこまつの浜に千鳥鳴くなり 大宮歌合




いかにして君が(ころも)にたちつらむ こまつの山の墨染の雲 信明集




楽浪や小松に立ちて見渡せば 三保が岬に(たづ)群れて鳴く 仲実朝臣(永久百首)







【現地へ訪問】




まさに白砂青松
水もきれいだった



まるで海のような景色が広がっていた
訪問したのは5月だったが、夏になれば海水浴客(?)で混み合うのだろう



松林の中



「名勝 雄松崎湖岸」碑

















え〜と、小松、若松は未来があるのでめでたく、老松は長寿なのでこれまためでたいです。
中高年の松って、どう表現するのかな。






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