すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


琴浦(ことうら)神社(兵庫県尼崎市)









琴浦(ことうら)って優雅な名前やなと、それなりの期待感を持って訪問したが、ふつうの一般的な、あんまり手入れのされていない、町の鎮守社であった。

祭神は源融らしい。
源融は、平安時代の嵯峨天皇の皇子で、京都六条の河原院の邸宅に、陸奥の塩釜を模した庭園を作り、そこで塩焼きを実践していた風流人。
じつは、この琴浦神社から毎日三十石の海水を河原院に運んでいたとのこと。
そんなウラ話があったのか。


また、ここから眺める海岸の風景が他所より優れているので「異なる浦=異浦(ことうら)」から琴浦に転じたらしい。

現地の案内板



摂津名所図会では、
「此の所海浜にして、南は紀の路、和泉の浦々、阿波鳴門まで見えわたりて、風景斜ならず、異なる勝地なればとて異浦とも呼ぶ。」
と記述している。



さぞかし、素晴らしい景色が広がっていたのだろう。



現在では、


神社の前は、とうの昔に陸地化されて、市街地となっている。




今となっては、往時を偲ぶよすがもない。





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そんな琴浦を詠んだ歌が遺っている。


松の風波のしらべる琴の浦は鴎の遊ぶ所なりけり 夫木和歌抄


はつ音をばわが方になけ子規(ほととぎす)ことうらにまつ人はありとも 続千載和歌集


ことうらに朽ちて捨てたるあま小船わが方に引く波も有りけり 後光明照院(風雅和歌集)



















尼崎競艇のすぐ近くです。
終わったところだったようで、大変な人込みでした。





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