すさまじきもの 〜歌枕★探訪〜 |
歌枕としては、単に「朽木」よりも「朽木の杣」のほうが通りがよい。 「杣」とは、寺社建築用の木材採取の山のこと。 奈良時代、大仏殿建造の際に、朽木から材木を供出したとの記録があるらしい。 木材伐採に従事する人を「杣人」といい、独特の宗教観があったようだ。 また「朽木」という地名も秀逸である。 「朽ちた木」という、まるで一般名詞のような分りやすい地名なので、詠み手としてもイメージ通りの歌が作れたことだろう。 |
足引の山に生ひたるしらかしの 知らじな人を朽木なりとも | 凡河内躬恒(後撰和歌集) |
花咲かぬ朽木の杣の杣人の いかなるくれに思ひ出づらむ | 藤原仲文(新古今和歌集) |
花咲かでいく世の春にあふみなる 朽木の杣の谷の埋れ木 | 藤原雅経(新勅撰和歌集) |
春来ては花とか見らむおのづから 朽木の杣に降れる白雪 | 源実朝(金槐和歌集) |
浮世をばわたりすてても山川や 朽木の橋に行きかかりつつ | 道興准后(廻国雑記) |
え〜と、朽木は京に近かったことから数奇な歴史を刻んでいて、たとえば足利将軍を応仁の乱以降に匿ったことなどをより深く考察していくと、京と朽木の間での歌のやり取り等があったはずで、探してみるといろいろと資料があるはず。 |