すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


熊来(石川県七尾市)





はしたての 熊来酒屋に まぬらる奴 わし さすひ立て
率て来なましを まぬらる奴 わし
万葉集

万葉集には、各地の民間で伝わっていた民謡なども収録されている。
方言なのか、昔の言葉なのか、よく分からないが、この歌は能登の国に伝わる庶民の歌らしい。
仲間が酒屋に怒鳴られている、ワッショイ!って感じ。
「熊来酒屋」とは、酒を造っていた場所なのか、酒を売っていた店なのか、酒が飲める居酒屋みたいなとこだったのか、よく分からないが、万葉の昔でも庶民の身近に酒があったということ。
「わし」はワッショイ!
「はしたての」は熊来に掛かる枕詞


次の歌も庶民の歌

はしたての 熊来やらに 新羅斧 落し入れ わし かけてかけて
な泣かしそね 浮き出づるやと見む わし
万葉集

「熊来のやら」とは、熊木川の河口付近か。
鉄製の斧を海に落とした人が嘆いている様子を囃し立てている。



近くの麻加夫都阿良加志比古神社に、上記の二首および「机の島」の歌の歌碑がある









万葉フリークの中には、こんな庶民の歌が大好きな人もいるようだ。
私は、それほど興味がないのだが、ただ、「熊来酒屋」という言葉になんとなく惹かれてしまい、北陸旅行の際に現地を訪問してきた。



熊木川の河口に架かる橋の上から上流方向を写す。
川が二手に分かれているが、右手の方が熊木川。



同じ橋の上から海の方向。
この辺りが「熊来のやら」だろうか。
こんな海で斧を落としたら、戻ってくることはない。



万葉歌碑がある麻加夫都阿良加志比古神社。
日本で一番長い名前の神社らしい。



社殿も立派であった。











現地訪問から一年以上経過してから、このページを作りました。
現地のことは、ほとんど覚えていません。






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