すさまじきもの 〜歌枕★探訪〜 |
熊来(石川県七尾市)
はしたての 熊来酒屋に まぬらる奴 わし さすひ立て 率て来なましを まぬらる奴 わし |
万葉集 |
万葉集には、各地の民間で伝わっていた民謡なども収録されている。 方言なのか、昔の言葉なのか、よく分からないが、この歌は能登の国に伝わる庶民の歌らしい。 仲間が酒屋に怒鳴られている、ワッショイ!って感じ。 「熊来酒屋」とは、酒を造っていた場所なのか、酒を売っていた店なのか、酒が飲める居酒屋みたいなとこだったのか、よく分からないが、万葉の昔でも庶民の身近に酒があったということ。 「わし」はワッショイ! 「はしたての」は熊来に掛かる枕詞 次の歌も庶民の歌 |
はしたての 熊来のやらに 新羅斧 落し入れ わし かけてかけて な泣かしそね 浮き出づるやと見む わし |
万葉集 |
「熊来のやら」とは、熊木川の河口付近か。 鉄製の斧を海に落とした人が嘆いている様子を囃し立てている。 |
万葉フリークの中には、こんな庶民の歌が大好きな人もいるようだ。 私は、それほど興味がないのだが、ただ、「熊来酒屋」という言葉になんとなく惹かれてしまい、北陸旅行の際に現地を訪問してきた。 ![]() 熊木川の河口に架かる橋の上から上流方向を写す。 川が二手に分かれているが、右手の方が熊木川。 ![]() 同じ橋の上から海の方向。 この辺りが「熊来のやら」だろうか。 こんな海で斧を落としたら、戻ってくることはない。 ![]() 万葉歌碑がある麻加夫都阿良加志比古神社。 日本で一番長い名前の神社らしい。 ![]() 社殿も立派であった。 |