すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


久米路橋(長野県長野市)








え〜と、元々は犀川の峡谷で久米路峡という名勝地だった。

峡谷ゆえに橋が架けやすく、中世に久米路橋という吊り橋が架けられた。

但し木製の橋なので中が虫食いで虚ろになっているかも知れないので、十分に気をつけて渡る必要があった。


そこでこの歌の登場


埋木(うもれぎ)はなか虫はむといふといふめれば 久米路の橋心してゆけ 拾遺和歌集


久米路橋の北袂に歌碑



紛らわしいのは、大和国葛城山に「久米の岩橋」という歌枕があり、それは
不細工な顔の神様が夜中に吉野山まで石橋を架けるという伝説が元となっているのだが、大和国の方は石橋であること。
信濃国の久米路橋は木製であること。木製ゆえに朽ちやすいもの。
両者を混同している本もある。



なお長野県人は誰でも歌うことができる(らしい)県歌「信濃の国」では、4番目の名所旧跡の歌詞の中で「心して行け 久米路橋」と歌われている。



1943年、久米路峡のすぐ下流で東京電力のダムが完成。結果、峡谷はダム湖に沈み、新しい久米路橋が架けられた。



かつての久米路峡谷、現在はダム湖で湛水している




久米路橋、コンクリートアーチ橋(見えないが)




久米路橋から上流方面、湛水した久米路峡谷




久米路橋から下流方面




橋の北袂に史跡が整備されている





善光寺道名所図絵「久米路の橋」 (早稲田大学図書館)


久米路峡谷が描かれている。橋は木製。

















さて現地を訪問して、久米路橋以上に興味を持ったのが、久米路峡谷の治水事業についての案内板。









峡谷の部分が狭いため、大雨が降ると水が下流に流れず、上流で水が溢れてしまう。
このため水を下流へ流すトンネルを二本通し、またダム湖に出っ張った山を開削して、洪水時にスムーズに水が下流へ流れるようにしたとのこと。




写真にトンネルの出口が二つ見える。




山が削り取られている。




二本のトンネルと山の開削の案内板の地図

いやはや、感動しました

















昔はスキーバスでよく通りました







copyright(C)2012 すさまじきもの〜「歌枕」ゆかりの地☆探訪〜 all rights reserved.