すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


黒髪山(岡山県新見市)






新見市の市街地から撮った黒髪山。
泊ったビジネスホテルの窓からちょうど見えた。
山間部の地方都市にはどこにでもあるような山であった。
但し昔は山頂近くに青龍寺という古刹があって、四季の景趣に優れていたようだ。

地元の地誌の「阿哲郡誌」には、は若葉によく花によし。は風涼しく水清冽にして避暑に適し、数日をこの山上に過さんかの苦暑を忘れ、俗塵を脱却して心身の暢然たるを覚ゆ。は紅葉の美あり、は白雪の大観に富む。』と記されているとのこと。


また、黒髪山と云うネーミングも良い。
白髪にならず黒々とした髪、豊かに木々が繁っているような若々しい髪を連想させる。縁起が良いとされてきた。




古来、歌枕として詠まれてきた。


ぬばたまの黒髪山を朝越えて山下露に濡れにけるかも 万葉集


ぬばたまの黒髪山の山菅に小雨降りしきしくしく思ほゆ 万葉集


色かへぬ黒上山の山かつら かくてやひさにつかへまつらん 藤原行家(新千載和歌集)


わが君は久にましませぬば玉の黒髪山のいろもかはらで 藤原清輔(秋風抄)


旅人のますげの笠やくちぬらん 黒髪山の五月雨のころ 玄賓僧都




えーと、「ぬばたま」は黒に掛かる枕詞
『黒髪山』は奈良県奈良市にもある。一つ目の万葉歌は多分奈良県の『黒髪山』だろう。
三つ目、四つ目の歌は大嘗会の賀歌として詠まれたもの。
いつまでも黒い髪の色が変わらないのが慶ばしいというかんじ。



まあ、こんな田舎都市にある普通の山が、京の都の歌人たちに知られていたとは驚きである。

















たしか毛無山というのも岡山県にあったような。






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