すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


黒瀬神社(岡山県倉敷市)







古事記、下巻、「吉備の黒日売(くろひめ)」から

吉備国の窪屋郡司の娘である黒日売は、見目麗しかったため都に召され、仁徳天皇の寵愛を受けた。

しかし皇后磐之媛(いわのひめ)の嫉妬にあい、苛めに耐え切れず故郷に帰ってしまった。

するとなんと、仁徳天皇は皇后に淡路島に行くと偽って、黒日売の後を追い吉備に向かった。

吉備国にたどり着いた仁徳天皇は黒日売と再会し、庭に蒔いた菜っ葉を摘んだりして、しばらくの間一緒に過ごした。

やがて都へ帰る仁徳天皇へ、黒日売は恋慕の気持ちを歌で詠み上げた。




以上、古事記の歌謡物語、「吉備の黒日売」を簡記した。
仁徳天皇の愛情の深さを表すエピソードである。




沖方(おきへ)には 小船(つら)らく K鞘(くろざや)の まさづ子我妹(わぎも) 国へ下らす 仁徳天皇(古事記)
沖の方には船がたくさん連なっていることだ。いとしい、かわいい妻が
郷里の吉備の国へ下っていかれることよ。
「おかやまの歌」(岡山県郷土文化財団)
「黒鞘」は、次の「ま」にかかる枕詞



山方(やまがた)()ける青菜も 吉備人と 共にし摘めば 楽しくもあるか 仁徳天皇(古事記)
山畑に蒔いたタカナ(大芥菜)も、吉備の国の人である黒媛と一緒に
摘むと楽しいことであるよ。
「おかやまの歌」(岡山県郷土文化財団)



倭方(やまとへ)西風(にし)吹き上げて 雲離れ 退()き居りともよ 我忘れめや 黒日売(古事記)
大和路に向かって西風が吹き上げ、雲がちりぢりばらばらに離れているように
遠く離れて住んでいても、どうしてあなたを忘れることができましょうか。
「おかやまの歌」(岡山県郷土文化財団)



倭方に 行くは誰が(つま) 隠り水(こもりづ)の 下よ這へつつ 行くは誰が夫 黒日売(古事記)
都のある大和のほうに帰ってゆくのはどなたのご主人でしょう。まるで地下の水が
人目につかぬそれと同じようにこっそりこっそりと帰って行かれる人は、どなたの
ご主人でしょうか。(どこのご主人でもない。わたしの、いとしいいとしい大切なひと!)
「おかやまの歌」(岡山県郷土文化財団)
 









二人が過ごした御殿の場所はどこなのか。
岡山県にはいくつかの候補地があるようだ。その中で訪問地として選んだのは倉敷市玉島黒崎の黒瀬神社。
訪問前にいろいろな資料をチェックしたが、その多くが黒崎の黒瀬神社を御殿の跡地としている。








【現地訪問】


黒瀬神社、倉敷市玉島黒崎1795








敷地内に、何の説明板もなかった。






周りの風景















古代の大和国と吉備国のつながりを示す逸話です







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