すさまじきもの ~歌枕★探訪~ |
黒塚(福島県二本松市)
鬼婆伝説と言えば、奥州安達ヶ原の「黒塚」だろう。 むかしむかし、この地に鬼婆が住んでいて、旅人の血を吸い肉を喰ったという伝説で、能の鬼女物の演目「黒塚」(安達原)の元ネタとなったもの。 能「黒塚」のあらすじ(WIKIPEDIAより転載)
般若の能面は本当に恐ろしい! クライマックスの山伏が鬼婆を調伏する場面は、狂言の一場面のような激しいアクションで圧巻である。 この黒塚の鬼婆伝説の舞台となったのが、福島県二本松市にある天台宗・真弓山観世寺である。 ![]() ちょうど工事中であった。 ![]() 五重塔。「安達ヶ原ふるさと村」から撮影。 ![]() 阿武隈川の堤防から観世寺を眺望。 ![]() 鬼婆が住んだという岩屋「笠石」がなんとなく見える。 ![]() そして阿武隈川の河川敷には鬼婆を葬った「黒塚」が残る。 ![]() これが「黒塚」! ![]() その前には福島県の母なる川の阿武隈川が流れていた。 黒塚と言えばこの歌 |
陸奥の安達の原の黒塚に鬼こもれりと聞くはまことか | 平兼盛 |
実はこの歌、拾遺和歌集に「名取郡黒塚に重之が妹あまたありと聞きつけていひつかしける」との詞書があり、三十六歌仙の一人、源重之の姉妹たちに対して平兼盛が送った恋歌らしい。 深層の令嬢と鬼女を掛けたものとのこと。 こんな種明かし的なストーリーもとても趣きがあって、この地の鬼婆伝説を重層的なものに仕立てている。 なお、正岡子規も当地を訪れ、痛快な俳句を詠んでいる。 |
涼しさや聞けばむかしは鬼の塚 | 正岡子規 |
なお、「安達ヶ原」の語源は嵯峨の「化野(あだしの)」と同じで、死んだ人を葬る場所の意味、らしい。 ふ~ん。 |