すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


桑名(三重県桑名市)





「東海道中膝栗毛」より

七里の渡し浪ゆたかにして、来往の渡船難なく、桑名につきたる悦びのあまり、名物の焼き蛤に酒くみかわして、かの弥次郎兵衛・喜多八なるもの、やがてここを立ち出でたどり行くほどに・・・
(五編 上)



七里の渡しを無事に渡り、桑名に着いた越えた弥次郎兵衛と喜多八は、その喜びから名物の焼き(はまぐり)と酒を酌み交わした。


古来、桑名の名物と言えば焼きハマグリであろう。木曽三川の河口付近で獲れるハマグリの身はとても大きいのだそうだ。

しぐるゝや やき蛤の にゆる音 班竹

居酒屋でもよく焼きハマグリを注文する。日本酒との相性は絶妙。



その手は桑名焼き蛤 ことわざ

ことわざにも登場するが、使ってる人に出会ったことがない。


時雨蛤
秋より春まで漁す。初冬の頃美味なるゆえ、時雨蛤の名あり。溜豆油にて製す。
(東海道名所図会)


昔は甘露煮にして保存していたようだ。江戸の殿様にも献上されていたらしい。



また、桑名はシロウオも名物とのこと。
湖で獲れるシロウオと違って、河口の汽水域に棲むシロウオは塩味があって美味しいらしい。

明けぼのや白魚しろき事一寸 松尾芭蕉(野ざらし紀行)


名産白魚
漁村赤須賀より出でて寒中に漁す。
(東海道名所図会)




焼きハマグリは中原中也の詩にも登場する。

桑名の駅
 
桑名の夜は暗かった
蛙がコロコロ鳴いていた
夜更の駅には駅長が
綺麗な砂利を敷き詰めた
プラットホームに只独り
ランプを持って立っていた

桑名の夜は暗かった
蛙がコロコロ泣いていた
焼蛤貝
(やきはまぐり)桑名とは
此処のことかと思ったから
駅長さんに訊ねたら
そうだと云って笑ってた

桑名の夜は暗かった
蛙がコロコロ鳴いていた
大雨の、(あが)ったばかりのその夜は
風もなければ暗かった
中原中也


桑名駅構内に詩碑

え〜と、古郷の山口県から東京へ汽車で向かっていたところ、大阪で大雨になり東海道線が不通となったことから、関西線の汽車に乗ったのだが、途中、夜中に桑名駅で長時間の停車となり、その時に作ったもの。



現在の桑名駅。
JR関西線と近鉄名古屋線が並ぶ。














■東海道を歩いた時の桑名の写真を紹介


街道沿いに天武天皇社。
壬申の乱で、大海人皇子は桑名を拠点として、近江の大友皇子と対決。
大海人皇子が桑名で駐泊した縁で天武天皇社が建立された。



桑名城近くにある「歴史を語る公園」



旧三ノ丸堀に架る橋



掘割と船溜まり



伊勢神宮の鳥居があった



七里の渡しの船着き場
旧東海道では、ここから舟渡しで熱田神宮へ海上七里の旅



昔はここから海だった。
陸地が海へ伸びたので、現在は揖斐川の河畔。



七里の渡に面して建てられた蟠龍櫓。かつては東海道を行き交う旅人たちが目にした桑名のシンボルであった。


広重の東海道五十三次「桑名」 (Wikipedia)

蟠龍櫓が描かれている。







桑名七里の渡しの別名は間遠の渡し。

(やぐら)拍子に 眠る間遠の わたしかな 班竹












七里の渡しについて、いろいろ資料を集めましたが、
なんとなく、こんな感じで、中途半端に、
終わります。







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