すさまじきもの ~歌枕探訪~


旧永田村(長野県中野市)





故郷(ふるさと)

兎追いし かの山
小鮒釣りし かの川
夢は今も めぐりて、
忘れがたき 故郷(ふるさと)

如何に在(い)ます 父母
恙(つつが)なしや 友がき
雨に風に つけても
思い出ずる 故郷

志(こころざし)を はたして
いつの日にか 帰らん
山は青き 故郷
水は清き 故郷
高野辰之


高野辰之記念館に歌碑



私は、唱歌とか童謡とか、これらのジャンルにそれほど興味はないのだが、信州旅行を前に情報収集する中で、「故郷(ふるさと)」という歌の中の「かの山、かの川」が北信州に実在することを知り、突然現地を訪問してみたくなった。

さらに調べてみると、「故郷」は国文学者の高野辰之により作詞されたもので、長野県の旧永田村は同氏の出身地だという。子供の頃に遊んだ故郷の山や川を思い出して作詞したのだろう。

他に「春の小川」や「朧月夜」も同氏の作詞で、それぞれ歌の中に故郷が登場する。


いやはや、アニメの聖地巡りみたいで、実に興味深いものである。








早速現地訪問


旧永田村は、なだらかな山に囲まれた棚田や畑 が広がるのどかな風景が広がっていた。日本の田舎の原風景みたいな所だった。



先ず訪問したのは高野辰之記念館。銅像が建っていた。当地の偉人なのだろう。
けれど高野辰之にそれほど興味がないので、入館はせず写真撮影のみ。



その後、真宝寺(中野市永江1923−イ)という寺から坂を下ったところにある班川(はんがわ)の「ふるさと遊歩道」へ向かった。



この班川こそ「かの川」である。
そして「春の小川」もこの川らしい。


次に「かの山」を探したのだが、方角がよく分からなくなり、周囲の山を見ても同じような山に見えてきて、焦ってしまった。

急遽、スマホで検索し、たどり着いたのが長野県産業労働部の「北信州からごきげんよう」のページ
そのページには「ふるさと遊歩道」を紹介した後に、「かの山」の写真が掲載されていた。




この写真を手掛かりに「かの山」を探していたところ、ついに写真の撮影地にたどり着いた。


あれが「かの山」。



そしてなんと、「朧月夜」に出てくる「かねの音」とは真宝寺のこの鐘のこととのこと。





妙に感動してしまった。














春の小川

春の小川は さらさら流る。
岸のすみれや れんげの花に、
匂いめでたく 色うつくしく
咲けよ咲けよと ささやく如く
高野辰之


「ふるさと遊歩道」に歌碑







朧月夜

菜の花畠に 入り日薄れ
見わたす山の端 霞ふかし
春風そよふく 空を見れば、
夕月かゝりて にほい淡(あわ)し

里わの火影(ほかげ)も、 森の色も、
田中の小路を たどる人も、
蛙(かわず)のなくねも かねの音も、
さながら霞める 朧月夜
高野辰之


真宝寺に歌詞


「ふるさと遊歩道」に音符碑















こんな訪問も楽しかったです









copyright(C)2012 すさまじきもの~「歌枕」ゆかりの地☆探訪~ all rights reserved.