すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


待兼山(大阪府豊中市)




多分、私にとって最も縁のない歌枕の地であろう。
待兼山は千里丘陵の西端にあり、現在では大阪大学豊中キャンパスの中に位置する。



ジャーン!大阪大学豊中キャンパスの正門。


中国縦貫道路が下を走り、正面に大阪モノレールが見える。
大学はその向こうにある。


チャラけた若者が出入りしていたが、頭は良いのだろう。





大阪大学豊中キャンパスの地図


待兼山は左上の緑地の部分。(赤い丸)
真ん中の下に正門がある。(赤い丸)
待兼山は小高い丘として豊中キャンパスの象徴的な自然地形となっていて、「待兼山」は大阪大学の代名詞とされている(らしい)。




この待兼山は「待ちかねる」という掛詞につながるユニークさから、中世では多くの歌人たちが待兼山を歌枕とする和歌を詠んだ。


「お待ちかね」の和歌披露

津の国待兼山呼子鳥鳴けど今来(いまく)といふ人もなし 古今和歌六帖
こぬ人を待ちかね山呼子鳥おなじ心にあはれとぞ聞く 大皇太后宮肥後(詞花集)
夜をかさね待かね山郭公 雲居のよそに一声ぞきく 周防内侍(新古今集)
明くるまで待ちかね山時鳥けふも聞かでや暮れむとすらむ 藤原顕綱(続後拾遺)
夜もすがらたまりて積もる涙かなこやまちかねの山川の水 俊頼朝臣(夫木和歌抄)
明けるまで待兼山ほととぎす けふもきかでや暮んとすらん 藤原顕綱(新後拾遺集)
ほととぎす待兼山の一声は 聞くにつけても怨めしき哉 顕昭(夫木和歌抄)
来ぬ人を待兼山ほとときす 傾く月のかけに啼くなり 後鳥羽院(夫木和歌抄)
今はただ空たのめにもこりぬとや 待兼山の峯のしひ柴 慈鎮(拾玉)
頼めつつ君が来ぬ夜の衣手や 待兼山のしづくなるらむ 藤原成通(新続古今集)
よもすがらまちかね山に啼く鹿はおぼろげにやは声を立つらん 源俊頼(夫木和歌抄)
(参考)大阪大学大学院文学研究科、「上方文藝研究の会」第6号、「名所『待兼山』の成立』より


呼子鳥(郭公)やホトトギスが登場する場面のようだ








摂津名所図会の「待兼山」
(早稲田大学図書館)

なんとなく雰囲気は分かる











余談であるが、競馬のマチカネタイホイザーは大阪大学の卒業生が馬主であったことから名付けられたもの。




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奇跡が起きて、
息子が大阪大学に行ったら待兼山の現地調査に行きたいと思います。





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