すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


美豆(みづ)御牧(みまき)(京都府久御山町)





美豆にあった皇室の牧場

このホームページの題材として、うってつけの歌枕の地である。

まず、@皇室御用達というのが素晴らしい!

そしてA多くの歌人に詠まれたので、数多の歌が残されている。

なお、B木津川の氾濫や流路変更により、当時の風景は残っていない。

ただし、C地名としては残っていて、往昔の痕跡が窺える。




甲斐の黒駒など、諸国から献上される牛馬は、都の周辺で飼育された。放牧地としては、河川の低地などが利用されたようだ。美豆の御牧は木津川河畔の低湿地にあった皇室の牧場である。


ただし、古来、木津川は頻繁に洪水を起こし、対策として流路の変更がなされ、また近代では干拓で耕地化したので、牧場の風情は残っていない。


のちに東が美豆村、西が御牧村となる。また、馬嶋、馬場崎、馬場崎野、御所ノ内などの町名が現在のグーグルマップでも確認できる。


地名として、往古の美豆の御牧の痕跡が息づいている。






■取りあえず、現地訪問




「平安朝御牧場寮故址」の石碑
経緯度は、
34.894774, 135.736630



石碑の前は、御牧小学校



石碑の隣は、みまきこども園



玉田神社、京都府久世郡久御山町森宮東1
往昔は、「美豆野神社」だったという。
社頭に内裏名所百首の歌碑が設置されている。



そしてこれが美豆の御牧の現在の姿か
幾星霜を経て、現在は農地として整備されていた。






美豆の御牧を詠んだ歌


さみだれは美豆の御牧真菰草(まこもぐさ) 刈りほす暇もあらじとぞ思ふ 相模


春駒のあるるにぞ知る真菰草 みづの御牧に生ひそめにけり 六条斎院歌合


あさみどり沢辺にうつすの色は みづの御牧真菰なりけり 拾玉集


みづの江真菰も今は生ひぬれば たなれのを放ちてぞ見る 堀川百首


真菰刈みつの御牧の足の 早く楽しき世をも見る哉 兼盛集


五月雨にもすさめすまこも草 美豆の御牧の浪にくちぬる 菊葉和歌集


かりてほす美豆の御牧夏草は しけりにけりなもすさめす 内裏名所百首


玉田神社社頭に歌碑



山城のみづのみくさに繋がれて物憂げに見ゆる旅かな 頓證寺法楽百首


春ぞ見しみつの御牧にあれしこま 有もやすらんかくれつゝ 新後拾遺集


比ぶべき菖蒲も皆 みつの御牧にひけるなりけり 栄花物語




季節は春から夏、五月雨、梅雨時、
頻出する真菰草(まこもぐさ)はイネ科の植物で、川原に一般的に生えている草。春から夏にかけて刈り取るのだろう。菖蒲も水辺の植物。
草が萌え出ずる風景の中で、駒(馬)が放たれている様子を詠んだ歌が多い。






美豆の森を詠んだ歌


逢ふ事を淀に有てふ美豆の森 つらしと君を見つる頃かな 後撰和歌集

反歌
美豆の森もるこの頃のながめには 怨みもあへず淀の河浪 後撰和歌集


「美豆の森」は「見つ」を導くように使われている。
「ながめ」は梅雨時の「長雨」と「眺め」を掛けている。
とにかく、美豆の季節は梅雨時のようだ。













この付近の地図を眺めるだけで楽しいです






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