すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


三保の松原(静岡市清水区)




三保の松原に行ってきた。
文化財として国の名勝として指定、またユネスコの世界文化遺産「富士山」の構成資産に登録されている。
たしかにそれだけの景勝地オーラのようなものがあった。

ただ残念だったのは、訪問当日、曇っていて富士山が見られなかったこと。
三保の松原と富士山はセットのようなもので、ただの松原だけでは値打ち半減かな。



こんなかんじ

曇っていて、明るさもない。色彩的にも白砂青松になっていなかった。


観光センターの壁に、晴れたときの写真が張られていたので、記念に撮った。観光センターのおばちゃんによると、秋から冬にかけて晴れが続き、富士山に雪が積もると、完璧な写真が撮れるらしい。

観光センターの写真





とにかく車を駐車場に停めて砂浜へ向かった。



「羽衣の松」の碑。
これは二代目らしい。
初代は先ごろ枯れてしまい、新たに近くの枝ぶりの良い松を選んだようだ。全体的にこの辺りにある松は、昔から保護されてきたためか、立派な松が多かった。どれもこれも圧倒的な威圧感があった。






これが初代の「羽衣の松」(写真右)と石碑。
掲げられていた歌は、

風早の 三穂の浦廻を こぐ舟の 船人騒ぐ 波立つらしも 万葉集


これを和歌山の煙樹海岸を詠んだ歌だとする意見もあるが、やっぱり三保の松原だろう。 




このあたり、三保の松原を詠んだ、木製の歌碑がそこらかしこに建てられていて、次第に文学モードが高まっていく。



清見潟ふじの煙やきえぬらん月影みがくみほのうらなみ 後鳥羽院(玉葉集)


さらに


忘れめや 山路打出て 清見がた はるかに三保の 浦に松原 中務卿親王(続古今集)


さらにさらに


廬原清見の崎三保の浦の ゆたけき見つつ もの思ひもなし 万葉集





と、ふと見ると、能楽「羽衣」の案内板があった。
いやはや三保の松原といえば、羽衣伝説。
となりに謡蹟保存会の説明文もあった。



漁夫が天女の羽衣を取り上げ、返してほしかったら、天女の舞を見せてほしいと頼み、天女は素晴らしい舞を舞って、そのあとに富士山へ飛んでいく、というもの。
いかにも能楽ってかんじのストーリー。





(ワキ)
風早乃。三保の浦曲を漕ぐ舟乃。浦人騒ぐ。波路かな
「これは三保の松原に。白龍と申す漁夫にて候。萬里乃好山に雲乍ちに起り。一樓の明月に雨初めて晴れり。げに長閑なる時しもや。春の景色松原の。波立ち続く朝霞。月も残り乃天の原。及びなき身の眺めにも。心そらなる景色かな
忘れめや山路を分けて清見潟。遥かに三保の松原に。立ち連れいざや。通はん立ち連れいざや通はん

・・・・・・・・・







そのあとに御穂神社へ行った。
松の間を通っていく参道があって、予想以上に長い。


かなり歩くと、御穂神社に到着。

こじんまりした神社だったが、社格以上の風格があった。
境内全体的に、由緒あり気な雰囲気が漂っていた。




境内で与謝野晶子の歌碑発見

朝もなほ羽衣に似る雨降りて 桜の濡るる三保の松原 与謝野晶子













(番外編)


清水区興津の道沿いに素晴らしい歌碑を発見した。


諸人のたち帰りつつみるとてや関に向へる三保の松原 豊臣秀吉










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