すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


神坂(みさか)(長野県阿智村)








千早振る神の御坂(みさか)(ぬさ)まつり(いは)ふ命は母父のため 万葉集




超簡単にいうと、

神坂(みさか)は美濃国と信濃国の国境の峠。

・古代の東山道は神坂(みさか)峠を通っていたが、あまりにも急峻で過酷な行程であったため、その後の中山道では木曽路を通るルートに変更されている。

東山道の時代は、東国で徴兵された防人(さきもり)たちが九州へ向かうルートであった。







阿智村の神坂神社に着いたのは夕方5時を過ぎ、大雨が降っていた。
信州方面四泊五日の旅の最終日で、あとは伏屋と園原を残すだけというスケジュール。さすがに疲労困憊し、しかも傘を忘れていたので、神社の入り口から写真を撮っただけで引き返した。

夏の夕方の大雨、そして山奥の神社というシチュエーションは苦手。
変な虫とか爬虫類が出てきそうで、本当のところ、神社の入り口に立っただけで恐ろしかった。


神坂神社



旧東山道は、境内を通っていたらしい。

また再訪したいが、そんな日が来るのかな?










■神坂を詠んだ歌


信濃道は今の墾り道刈りばねに 足踏ましむな沓はけ我が背 万葉集


神坂神社の入り口に歌碑



信濃路木曽み坂の小笹原分け行く袖もかくや露けき 権中納言長方(続後撰和歌集)


谷風に雲こそのぼれ信濃路や木曽み坂の夕立の空 千恵法師(新千載和歌集)


思ひやれ木曾御坂も雲とづる山のこなたの五月雨の頃 宗良親王(新葉和歌集)

















受領(ずりょう)は倒れるところに土をつかむ 今昔物語

今昔物語の中の笑える逸話
(巻28第38話 信濃守藤原陳忠落入御坂語 第卅八)
信濃国司の任期を終えて都に帰る藤原陣忠は、神坂峠の断崖から馬もろとも谷底に落ちたが、奇跡的に木の枝に引っ掛かり、引き上げられた際はヒラタケをいっぱい抱えて上がってきたという話。
「こけてもタダでは起きない」という受領の貪欲さを表している。
受領の転落現場が神坂峠だったことを今回改めて知った次第。

















なんと、大好きな信貴山縁起絵巻にも神坂峠が登場する。
「尼君の巻」、弟を訪ねて姉の尼君が信濃国から奈良を目指して旅に出る。旅の険しさを表すものとして、神坂峠を馬で超えていく様子を描いている。


信貴山縁起絵巻「尼君の巻」 (朝護孫子寺)















ヒルとかもいそうでした







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