すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


三島江(大阪府高槻市)




三島江って、大阪というか摂津を代表するような歌枕の地!

高槻市教育委員会の案内板によると、

 
三島江の玉江の薦をしめしよりおのがとぞ思ういまだ刈らねど 万葉集
三島江は、まず万葉集に芦や薦の生い繁る淀川の光景としてあらわれる。そしてこれ以後淀川の三島江=玉江は、玉川の里の生活感あるたたずまいに対して、精麗な自然を表現する歌枕として、大宮人に意識され定着してきた。

(後略)

                    高槻市教育委員会






そんな由緒あり気の第一級の歌枕の地、三島江に行ってきた。



   
   目的地は三島江

   
   バス停も三島江

   
   民家の軒先に和歌の説明書き

三島江のひしの浮葉にぬる玉を薦しか夏の月もさやけき 後鳥羽院



   
   こっちにも

三島江の水鳥さわぐ夕暮に袖うちぬらし今ぞすぎゆく 大僧正尊行


   
   この灯篭は河川整備後にここに移されたものらしい。よくわからない。
   ただし三島江関係の資料には必ずこの写真が載っている。

   
   堤防の上に上がる。これが現在の三島江!京都方面。


   
   大阪方面。

   今となっては一般的な大河川の風景であるが、現在ここは菜の花が
   有名となっているらしい。
   インターネットで「菜の花 三島江」で検索すると、たくさんのホームページ
   が三島江の菜の花を採り上げており、こぞってここの菜の花はサイコー
   であると称賛している。
   訪問したのは4月中旬。ちょうど菜の花の見ごろの時期であった。


   といっても、ここから見える範囲において、それほどすごい菜の花が咲き
   乱れていたわけではない。


   
   堤防の上から陸地側、高槻の市街地方面









さて、摂津の国 第一級の歌枕の地、三島江にはどんな歌が残されているのか?
手元にある分だけ一挙に公開


三島江や露もまだひぬの葉につのぐむほどの春風ぞ吹く 源通光(新古今和歌集)
三島江につのぐみわたるの根のひとよのほどに春めきにけり 曾禰好忠(後拾遺和歌集)
の根もつのぐみぬらむ三島江の岸の青柳色づきにけり 藤原家隆
三島江や霜もまだひぬの葉につのぐむ程の春風ぞ吹く 源通光(新古今和歌集)
三島江の入江のまこも雨ふればいとどしをれてかる人もなし 大納言経信(新古今和歌集)
風吹けば 花咲く波の 折るたびに 桜貝寄る 三島江の浦 西行(山家集)
三島江の入江のを刈りにこそ我れをば君は思ひたりけれ 読人しらず(万葉集)
友鶴の群れゐしことは昔にてみしま隠れに音をのみぞなく 従二位成実(続古今和歌集)
春霞かすめるかたや津の国のほのみしま江のわたりなるらん 藤原頼家(詞花和歌集)
はつかにも君をみしま芥川あくとや人のおとづれもせぬ 伊勢(伊勢集)
三島江玉江まこもかりにだにとはで程ふる五月雨の空 藤原行能(新勅和歌集)
みしま江の入江に生ふる日のしらぬ人をもあひみつるかな 藤原基俊(続後撰和歌集)
乱れのかれ薬もさやにみしまえや氷のうへは浦風ぞふく  為道朝臣(続後拾遺和歌集)
さてもまた人しれずのみ消え佗びぬ三島がくれのあまの漁火 正三位知家(新千載和歌集)
みしまえ真菅のなへやもえぬらし友よぷ駒のけしきしるしも  小侍従(夫木和歌抄)
住吉の松もみゆきはありけりとこはめづらしく三島江の浦 小弁(夫木和歌抄)
 よそにのみ三島の根を絶えて刈りにだにやは今はおとづる 堀川百首 

これを見ると、やっぱり蘆や薦が名物。
「見し間」に掛けたものもある。




源氏物語にも登場
しらずともたづねて知らむ三島江に生ふる三稜(みくり)のすぢは絶えじを 光源氏(源氏物語)
かずならぬ三稜や何のすぢなればうきにしもかく根をとゞめけむ 玉鬘(源氏物語)

突然、夕顔の子供、玉蔓が成長して現れたと聞き、会う前に取りあえず書面で歌のやりとりをして、どのくらいのレベルなのか確認しようとして光源氏が玉蔓に送った歌。









さて、堤防を下った所に三島鴨神社があり、これまた大層由緒ありそうな雰囲気だったので、寄ってみた。




摂津名所図会にも登場している。


(早稲田大学図書館)




さて、太平洋戦争の時に、米軍の戦闘機が空から子供たちを追いかけ回すという卑劣な戦闘が行われた。子供たちは三島鴨神社に逃げ込み無事であったが、拝殿が射撃攻撃による火災で焼失してしまった。

このエピソードをモチーフにして地元民が詠んだ歌

三島江のよしあししげき昔よりこの民まもるこの神やしろ 高碕達之助


三島鴨神社境内に歌碑











道が細く、駐車場がなく、大変でした。






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