すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


三輪(奈良県桜井市)




奈良県桜井市にある大神神社(おおみわじんじゃ)に行ってきた。
ここは三輪山を御神体としており本殿がない。拝殿だけがある。




これが拝殿。
この拝殿から三輪山を御神体として仰ぎ見る。




これが三輪山遠景。大神神社の御神体。




この大神神社は万葉時代からの有名な由緒スポットだったので、古典にはさまざまなエピソードが記されている。




まずこれ。


額田王が明日香から近江へ向かう時、三輪山を振り返って読んだ歌。

うま酒三輪の山青丹よし奈良の山の山のまにい隠るまで道のくまいさかるまでに つばらにも見つつ行かむをしばしばも見さけむ山を心なく雲の隠さふべしや 額田王(万葉集)
なつかしい三輪山よ。この山が奈良の山々の間に隠れてしまうまで、また行く道の曲がり角が幾つも幾つも後ろに積もり重なるまで、充分に眺めていきたい山であるものを、たびたび振り返っても見たい山であるものを、無情にもあんなに雲が隠してしまっていいものだろうか。(桜井市のホームページより) 


その反歌
三輪山をしかも隠すか雲だにも心あらもな隠さふべしや 額田王(万葉集)
三輪山をどうしてそうやって隠すのか、
せめて雲だけでも情けがあってほしい、雲よ隠さないで


山辺の道沿いに歌碑(景行天皇陵の東南)



奈良平野はどこからでも三輪山が見えるので、額田王は何度も三輪山を振り返ったのだろう。













あと、
「女のもとに毎夜通ってくる男がいて、その男が誰なのか分からなかったのであるが、ある日、男の着物の裾に糸を結びつけておいて、男が帰った後、その糸をたどっていくと、それは三輪山に棲む大蛇であった・・・」
っていうのも有名な話。



この物語を題材としてできたのが、能楽「三輪」
能楽「三輪」のストーリーをここに書くと、たまらなく退屈になるので、写真だけ紹介。


これが「衣掛杉」(ころもがけのすぎ)。ここはまさに能楽「三輪」の聖地。

「三輪」に出てくる玄賓僧都が、女人に与えた衣が掛かっていたのがこの杉とされている。


そしてこの歌。

我が庵は三輪の山もと恋しくはとぶらひ来ませ杉立てる門 古今集
私の庵は三輪山の麓にあります。私を恋いしいのなら、
ぜひ来てください。杉の木の立っている門です
 

話は前後するが、玄賓僧都が衣を与えたあとに女に住処を尋ねると、この歌を歌って消えたというもの。



能楽の一場面だけ突然書いても、読む人には何のことか分からないと思う。













最後にこの歌

遠つおやのしろしめしたる大和路の歴史をしのびけふも旅ゆく 昭和天皇(昭和60年歌会始)


大神神社内に歌碑











Wikipediaによると、ここは「恋人の聖地」らしい。
けれどあまりカップルはいませんでした。



中途半端な訪問だったので、再訪したい。









 2015年5月に再訪

素晴らしい写真が撮れたので掲載。
山辺の道と三輪山と万葉歌碑




三輪の地酒「三諸杉」を使ったアイスクリーム


とってもおいしかったよ



日本酒の味のアイスクリームって初めて食べた







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