すさまじきもの 〜歌枕★探訪〜 |
三渡川(三重県松阪市)
いやはや、相当なマイナーネタである。 伊勢街道を南下していくと、松阪の市街地の手前に何の変哲もない一般的な川を渡る。 これが「三渡川」で、別名「涙川」。 三渡川の名前の由来は、潮の満ち引きによって川を渡る場所が三か所あったことによる。 伊勢街道を歩いたりしない限り、意識することのないような川である。 こんな川 ![]() 伊勢街道に架かる橋の上から下流方面を写す。 この先500メートルくらいで海に注いでいる。 ![]() 橋の袂にあった道標。 正面:「いがごへ追分」、左:「右いせみち」 こんな川であるが、伊勢街道が通っているため、それなりに歌が詠まれている。 |
みわたりの磯わのうへちなほ深しあさみつ潮のからきけふかな | 鴨長明(伊勢記) | |
いせの海の汐のひかたの見渡にいそがずやどる秋夜の月 | 前内大臣家(雲葉和歌集) | |
涙川船出やせまし伊勢の海の三河へ渡る湊たづねて | 大中臣輔親 | |
みわたりの月は秋なる波の上にまだほに出ぬ伊勢の濱荻 | 寂蓮(松葉名所和歌集) | |
いせの海のみわたりかくる浪間より數もかくれぬあのヽ松原 | 西園寺(松葉名所和歌集) |
三渡川で「川」のハズだが、「磯わ」とか「汐」とか「三川へ渡る湊」とか「波の上」とか「波間」とか、海辺の感覚で歌を詠んだようだ。 この周辺の伊勢街道の様子 ![]() ![]() いろいろ街道らしい撮影ポイントがあったが、なぜかこんなイマイチ な写真が残っている。 |
伊勢参宮名所図会に描かれている三渡川。 今と比べるとかなり川幅が広い。 ![]() 早稲田大学図書館 |