すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


三芳野(みよしの)(埼玉県川越市)












毎年会社の夏期休暇を利用して歌枕探訪を続けている。

時期的に台風と遭遇することが多い。2023年夏は中国地方への旅であったが、初日に台風の暴風の中で車中泊、最終日に次の台風が襲来中の大阪へ戻っている。

2024年夏は、長らく憧れの地である北関東遊覧への旅に出たが、南の海から台風が接近しており、一週間近い旅程においてさまざまな影響があった。

8月12日、最終日の朝、大雨のなか東松山駅前のホテルを出発した。台風はまだ千葉県沖の太平洋上にあったが、台風の雨雲が関東全域にかかっていた。

車のワイパーを全力で動かしたが、前が見えなかった。車をゆっくり走らせ、1時間程掛かり川越市の三芳野神社へ到着。

三芳野神社に来たわけは、神社の境内に伊勢物語の有名な三芳野の歌の歌碑があるとの情報を得たため。

この大雨の中、歌碑を探したが、なかなか見つからず、服はびちゃびちゃになり、靴の中にも水が入り、大変だった。



三芳野神社



童歌「とおりゃんせ」の歌の発祥の地らしいが、よく分らない



参道の先端に、木に隠れるようにして歌碑があった
(右手の石碑)








伊勢物語 第十段

昔、男が、武蔵国まで出掛けていって女に求婚した。
女の母親は藤原氏出身だったので、娘を素姓の尊いひとに娶せたいと考え、この男に歌を詠んでよこした。


みよし野たのむ(かり)もひたぶるに君が方にぞよると鳴くなる 伊勢物語


雁は娘のこと。三芳野の田面(たのも)に降り立っている雁はひたすら貴方に心を寄せています、で「田面」と「頼む」を掛けたもの。



男の返しの歌


わが方によると鳴くなるみよし野たのむ(かり)をいつか忘れむ 伊勢物語


三芳野神社の参道の先の方に歌碑


どうして忘れることなどありましょうか、と返している。


伊勢物語は、この男はどこにいっても女に恋することをやめなかった、と結んでいる。








伊勢物語で男が現地の女に恋した三芳野は現在の川越の町のことらしい。

予定ではこの後に川越の町や川越城を散策することになっていたが、台風由来の大雨のため断念。



神社の駐車場から見えた川越城の本丸御殿
一層雨がつよくなっていた



案内板に川越城復元模型の写真があった
左の矢印の先に三芳野神社
真ん中の赤い丸は川越城
右上の赤い丸は川越商店街
北から望んだもの















その他、三芳野を詠んだ歌



みよし野や君をたのむの秋の来てむかし忘れぬ初雁の声 堀田加賀守正盛
経緯度 35.933183, 139.516161 に歌碑があるという情報
江戸時代初期の川越藩主



春は今日立つとも言はじ武蔵野や霞む山なき三芳野の里 堯恵(北国紀行)



かきりあれはけふ分つくす武藏野の境もしるき河越の里 道興准后(廻国雑記)



城下町は 古き鐘楼の つく鐘の 曇り夜空に 春めきて聞ゆ 安部路人
明治時代の医師









これで伊勢物語ゆかりの地は、ほぼ行き尽くしました





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