すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


水の江(京都府伊根町)





昔話の浦島太郎の伝説は日本各地に伝わっているが、丹後国水の江は最も古い伝承地とされている。
日本書紀にも記述があり、また万葉集にも浦島伝説が長歌で物語が詠まれている。


伝承によると、
・雄略天皇22年のこと(西暦478年)
・丹波国に水江浦嶋子という漁師がいた
・ある日、漁に出かけたが、魚は全く釣れなかったが、亀を捕まえた
・亀は美しい女性になり、浦嶋子は亀を妻にした
・二人は沖へ漕ぎ出し、常世の国へ行った
・常世の国で歓待を受けて3年間暮らしたが
・ある日浦嶋子は郷里のことを思い出し、帰ることにした
・妻から玉手箱を受け取ったが、これは開けてはならないと告げられる
・元の浜に帰ってみると、数百年も過ぎていて、知る人は誰もいなかった
・浦嶋子は途方に暮れて玉手箱を開けてみると、煙が出て、

と、ここで浦嶋子が歌を詠む

常世辺に雲立ちわたる水の江の 浦島の子が言持ち渡る 浦嶋子(浦嶋伝説)

妻だった女が遠くから返した

大和辺に風吹きあげて雲離れ 退き居りともよ吾を忘らすな 亀姫(浦嶋伝説)

さらに浦嶋子

子らに恋ひ朝戸を開き吾が居れば常世の浜の波の音聞こゆ 浦嶋子(浦嶋伝説)

後世の人が詠んだ

水の江の浦島の子が玉匣開けずありせばまたも会はましを 浦嶋伝説

常世べに雲立ち渡るたゆまくもはつか惑ひし我そ悲しき 浦嶋伝説




時間が経過するスピードがこの世と常世では違ったようだ。




万葉集の長歌

春の日の 霞める時に 住吉の 岸に出で居て 釣舟の とをらふ見れば いにしへの ことぞ思ほゆる 水江の 浦の島子が 鰹釣り 鯛釣りほこり 七日まで 家にも来ずて 海境を 過ぎて漕ぎ行くに 海神の 神の娘子に たまさかに い漕ぎ向ひ 相とぶらひ 言成りしかば かき結び 常世に至り 海神の 神の宮の 内のへの 妙なる殿に たづさはり ふたり入り居て 老いもせず 死にもせずして 長き世に ありけるものを 世間の 愚か人の 我妹子に 告りて語らく しましくは 家に帰りて 父母に 事も告らひ 明日のごと 我れは来なむと 言ひければ 妹が言へらく 常世辺に また帰り来て 今のごと 逢はむとならば この櫛笥 開くなゆめと そこらくに 堅めし言を 住吉に帰り来りて 家見れど 家も見かねて 里見れど 里も見かねて あやしみと そこに思はく 家ゆ出でて 三年の間に 垣もなく 家失せめやと このを 開きて見てば もとのごと 家はあらむと 玉櫛笥 少し開くに 白雲の 笥より出でて 常世辺に たなびきぬれば 立ち走り 叫び袖振り こいまろび 足ずりしつつ たちまちに 心消失せぬ 若かりし 肌も皺みぬ 黒かりし 髪も白けぬ ゆなゆなは 息さへ絶えて 後つひに 命死にける 水江の 浦の島子が 家ところ見ゆ 万葉集

万葉集では、舞台は住吉になっている。




関連の歌


あけてだに何にかは見む水の江浦嶋の子を思ひやりつゝ 中務(後撰和歌集)


夏の夜は浦島の子なれや はかなくあけてくやしかるらむ 中務(拾遺和歌集)


水の江浦島の子なれや はかなくあけて悔しかるらむ 丹後風土記


君に逢ふ夜は浦島玉手箱 あけて悔しきわが涙かな お伽草子














■ 現地訪問


水の江里、浦嶋公園 ( 京都府伊根町本庄浜111-1)

海底にある竜宮城をモチーフにしている



丸い輪を挟んで、浦島太郎と亀姫の像



奥に宇良神社こと浦嶋神社がある

主祭神はもちろん浦嶋子(浦島太郎)



拝殿



いろいろなものが文化財に指定されているらしい



絵馬は亀に乗った浦島太郎と玉手箱
長寿を願うのだろう



常世の国の蓬莱島をモチーフにした「蓬山の庭」があった

















期待感が強すぎたのか、まあ、普通でした







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