すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


水落遺跡(奈良県明日香村)







皆人の 寝よとのは 打つなれど 君をし思へば 寝ねかてぬかも 万葉集


この万葉歌の意味は、もう寝る時刻であると鐘は打たれてるけど、貴方のことを思うと眠れない、というところ。
和歌によくある「君を思うと眠れない」パターンで凡庸な歌だと思っていた。
ところが、明日香村散策の際に水落遺跡に訪れて、万葉時代に時刻を測ることは「当時の最新かつ最高の科学技術を結集した国家的な大事業」との現地案内板の説明を読んでみて、改めてこの凡庸な(?)万葉歌の崇高な背景に畏敬の念を抱くこととなった。






■水落遺跡


堀の上を渡っていく



案内板があった。
後ろの建物は明日香村埋蔵文化財展示室



イラスト入りで、よく理解できた。














現地案内板
 斉明天皇6年(660)5月、皇太子中大兄皇子(のちの天智天皇)は、日本で初めて水時計を作って人々に時刻を知らせた、と「日本書紀」に書かれています。「日本書紀」はその場所について何も語っていません。1981年にその水時計の遺跡が、ここ飛鳥水落遺跡で掘り出されたのです。

ここでは、精密に、堅固に築いた水時計建物と、建物内の中央で黒漆塗りの木製水槽を使った水時計装置とが見つかりました。水時計建物を中心にして、水を利用したさまざまな施設があることも分かりました。

当時の日本は、中国の先進文明を積極的にとりいれて、律令制に基づく中央集権的な国家体制を急速にととのえつつありました。中大兄皇子は、中国にならい政治や人々の社会生活を、明確な時刻制によって秩序づけようとしたのです。

時計装置の製作と運用は、当時の最新かつ最高の科学技術を結集した国家的な大事業であったことでしょう。その意味において、飛鳥水落遺跡は律令国家確立への記念碑といえるでしょう。





現地風景



これも



背後の丘は史上有名な甘樫丘。














実に有意義な訪問でした。






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