すさまじきもの 〜歌枕★探訪〜 |
向津久は「むかつく」と読む。初めて知った。 もし大都市近郊にあれば珍しい地名として持て囃されたと思うが、山口県の日本海側の辺縁の地の地名なので、世間に知られないまま今に至っているのだろう。 とりあえず向津久を詠んだ歌の紹介 |
むかつくの奥の入江のさざなみに海苔かく海女の袖はぬれつつ | 柿本人麻呂 |
むかふつの海苔かくあまの袖にまた思はずぬらす我旅衣 | 飯尾宗祇 |
柿本人麻呂の歌の方は、人麻呂が任国の石見国から九州へ往還した際、この地の風光を深く愛でて詠んだもの。 そして室町時代に連歌師の飯尾宗祇が、この地で人麻呂の詠歌に因んだ歌を詠んでいる。 ■ 現地訪問 八幡人丸神社 ・・・ 山口県長門市油谷新別名35 ![]() 県道286号線に面して一ノ鳥居 ここから石段を上っていく ![]() 石段を上ったところに二ノ鳥居 ![]() 拝殿 ![]() 境内には古典に因んだ植物が植えられている。古典樹苑というらしい ![]() 古典に因んだ植物とその説明板 約700メートル西にあるJRの駅名は「人丸駅」 ![]() 駅の入り口に鳥居がある 上記の人麻呂の歌は、向津久の、奥の入り江で海苔を採っている海女について詠んでいるが、この下の国土地理院の色別標高図で分かるとおり往古は湯谷湾はもっと東の方まで海が広がっていたようだ。 |