すさまじきもの 〜歌枕★探訪〜 |
淀川に架かる長柄橋 長柄橋と言えば“人柱伝説”が有名 昔読んだマンガの中で、言わんでもいいことを言って墓穴を掘った場面があって、「キジも鳴かずば撃たれまい」と笑われていたのを覚えていたが、実は「キジも鳴かずば〜」の言葉は、長柄橋の人柱伝説に登場する悲しい話のことであった。 ちょっと長いけど、人柱伝説を紹介する。 飛鳥時代、推古天皇のころ 昔の淀川はよく氾濫し、橋を架けてもすぐに流された。 長者の厳さんは「袴(はかま)に継ぎのある人を人柱にしよう」と提案した。 そしたら厳さん自身の袴に継ぎがあり、すぐさま人柱にされてしまった。 嫁いでいた娘はショックで口がきけなくなり、離縁される憂き目に。 娘が夫に連れられて実家に帰る途中のこと。道ばたでキジが鳴いたので夫がそれを見事に射止めた。 これを見た娘は急に口がきけるようになり、この歌を詠んだ。. |
もの言わじ 父は長柄の人柱 鳴かずば雉も 射られざらまし | 長柄人柱伝説 | |
つい口に出てしまった言葉から父は長柄橋の人柱にされてしまった。 キジも鳴かなければ射られることもなかっただろう。 |
補鋼桁との間に斜めにケーブルを張ったニールセン・ローゼタイプのアーチ橋。 本当に美しい橋である。 たまたま吹田市豊津周辺を歩いていたら、人柱伝説とキジの歌にまつわる「雉子畷」の石碑を発見!。 |
長柄橋は、淀川の洪水でよく流されてしまい、ついには橋柱だけが残ったという。 このため長柄橋は、「壊れたもの」や、橋がなくなって「久しい」、橋は朽ちて「橋柱」だけが残った、「名」だけ残った、といったイメージの歌がよく詠まれた。 また、「ながら」の音から「ながらへて」や、「〜乍ら(ながら)」と詠み込むことも多かった。 こんなかんじ |
さもあらばあれ 名のみながらの 橋柱 朽ちずば今も 人もしのばじ | 藤原定家 |
有りけりと 橋は見れども かひぞなき 船ながらにて 渡ると思へば | 和泉式部 |
世の中にふりぬるものは津の国の ながらの橋と我となりけり | 古今和歌集 |
難波なる長柄の橋も尽くるなり今は我が身を何にたとへむ | 伊勢(古今和歌集) |
あふ事を長柄の橋のながらへて 恋ひわたるまに年ぞへにける | 坂上是則(古今和歌集) |
人わたすことだになきをなにしかも長柄の橋と身のなりぬらん | 七条后(後撰和歌集) |
あしまより見ゆる長柄の橋柱 昔のあとのしるべなりけり | 拾遺和歌集 |
朽ちもせぬ長柄の橋のはし柱ひさしきことの見えもするかな | 後拾遺和歌集 |
わればかり長柄の橋は朽ちにけり難波の事もふるる悲しさ | 赤染衛門(後拾遺和歌集) |
ゆくすゑをおもへはかなし津の国の長柄の橋も名はのこりけり | 千載和歌集 |
摂津名所図会 「長柄渡口」
早稲田大学図書館
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