すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


長良川(岐阜市)




長良川は源流を岐阜県北西部の大日ヶ岳に発し、濃尾平野の木曽三川の一つとして岐阜市内を経て伊勢湾に注ぐ。もちろん一級河川。

昔から鵜飼で有名。

長良川の鵜飼を紹介するホームページ(岐阜観光コンベンション協会)によると、そもそも鵜飼には1300年の歴史があり、鵜飼漁の技術は国の重要無形民俗文化財に指定されているとのこと。時の権力者に保護され、織田信長や徳川家康も鵜飼を大いに楽しんだとされている。



現在でも岐阜長良川の観光のハイライトになっている。


(岐阜観光コンベンション協会)









個人的にはそれほど鵜飼に興味がないので、現在に至るまで一顧だにしてこなかった。


ところが、室町時代の古典博士である一条兼良が奈良から美濃国への旅行記で、この長良川の鵜飼について三首も歌を詠んでいる。



スタートは、夕闇の中を篝を焚いて川をさかのぼる。
どれだけの鵜飼船が出ているのか分からない。

夕闇に八十伴の男の篝さし上る鵜舟は数も知られず 一条兼良(藤川の記)



鵜飼漁はたけなわに入り、
鵜匠が操る手縄の技に感心する。

鵜飼人繰るや手縄のみじか夜も結ほぼれなば解くは明けじを 一条兼良(藤川の記)



鵜が吐いたアユを篝火で焼いて賞味する。

とりあへぬ夜河の鮎の篝焼珍とも見つ哀とも見つ 一条兼良(藤川の記)

これを珍しいというか、哀れというか、という感想。





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同じような感想を持ったのが松尾芭蕉

おもしろうて やがて悲しき 鵜舟かな 松尾芭蕉



舟の上に何時間もいて、酒も飲んでいただろうから、
たぶん疲れたのだと思う。












そんな長良川の写真


墨俣一夜城の辺りから下流方向。
県道31号線の長柄大橋のトラスが美しい!



同じ場所から上流。
金華山が見える。




JR長良川橋梁。
しょっちゅう列車が走っていたが、カメラを向けると全く来なくなった。



岐阜市内の長良川。(遠くに少し見える)



金華山と長良川。








木曾路名所図会「長良川鵜飼舟」 (早稲田大学図書館)








「うかいミュージアム」の地図
鵜飼はだいたいこの辺り






多分このまま鵜飼を知ることもない人生を送るのだと思います。







追記













鵜飼見学した

















追記その2


十八楼ノ記 (松尾芭蕉)

美濃の国長良川にのぞんで水楼あり。あるじを賀島氏といふ。稲葉山うしろに高く、乱山西にかさなりて、近からず遠からず。田中の寺は杉のひとむらに隠れ、岸にそふ民家は竹の囲みの緑も深し。さらし布ところどころに引きはへて、右に渡し舟うかぶ。里人の行きかひしげく、漁村軒をならべて、網をひき釣をたるるおのがさまざまも、ただこの楼をもてなすに似たり。暮れがたき夏の日も忘るるばかり、入日の影も月にかはりて、波にむすぼるるかがり火の影もやや近く、高欄のもとに鵜飼するなど、まことに目ざましき見ものなりけらし。かの瀟湘の八つの眺め、西湖の十のさかひも、涼風一味のうちに思ひこめたり。もしこの楼に名を言はむとならば、「十八楼」とも言はまほしや。

此のあたり目に見ゆるものは皆涼し 松尾芭蕉





え〜と、
長良川の河畔の河原町にある老舗旅館の十八楼は松尾芭蕉が命名した。中国の瀟湘八景と西湖十景を合わせたような素晴らしい情景ということで、十八楼と。


かつての長野県の、六十三銀行と第十九銀行が合併して、現在の八十二銀行になったようなものかな
(63+19=82)









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