すさまじきもの 〜歌枕★探訪〜 |
渚の院(大阪府枚方市)
渚の院といえば伊勢物語、八十二段。 貴族たちが交野の地で一日中狩猟をし、花見をして、そして夜更けまで宴会をする様子がなんとも楽しげであるが、実は藤原氏との権力争いに敗れた惟喬親王が、憂さ晴らしのために仲間と共に遊びに出かけたという内容。 惟喬親王の一行は渚の院で酒を飲んでいたが、ちょうど桜の満開の時期で、身分の上下にかかわらず、みんなで歌を詠みあった。 |
世の中に絶えて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし | 在原業平(伊勢物語) | |
もし世の中に桜がなかったら、花が咲いたり散ったりすることを 心配せずにすみ、春の心は長閑だろう。 |
散ればこそいとゞ桜はめでたけれ うき世になにか久しかるべき | 伊勢物語 | |
桜の花も散るから趣きがある。つらい世の中に 何か永遠なものがあるのだろうか。 |
この渚の院での宴会は、みんなで失意の惟喬親王を励ます機会だったので、満開の桜を詠むにしても、どうも素直に桜を愛でたものではなく、逆説や反語を用い、斜に構えたような歌を詠むしかなかったのだろう。 ただし、一ひねりが効いたのか、業平の詠んだ「世の中に〜」の歌は、人口によく膾炙し、多分一番有名な桜の歌だと思う。 |
■現地訪問 ![]() 周りは一般的な住宅地であった ![]() こんなかんじで案内板があった ![]() フェンスがあったが、開けることができる ![]() こんな案内板 ![]() 渚の院は後に観音寺と呼ばれる寺院が建立されたが、明治時代に廃寺。現在その跡地には鐘楼と鐘が残されている ![]() 石碑が並んでいた 隣は保育園 ![]() 業平の歌碑と桜 ![]() iPhoneの新機能(広角度で撮影)、上の写真と比べてほしい |