すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


妹背山(奈良県吉野町)

「妹背山」は、ふつう和歌山県かつらぎ町の紀伊の「妹背山」が万葉集がらみで有名。

しかし奈良県吉野町にある「妹背山」もなにかと古典の題材になっていて、侮りがたい存在である。

一般的に「妹背山」とは川を隔てて向かい合う二つの山のことだが、奈良と和歌山の「妹背山」はそれぞれ吉野川と紀ノ川沿いにあり、いわば一つの川の上流と中流に二つの「妹背山」があるのでややこしい。

しかも紀ノ川の昔の河口にあたる和歌の浦にも「妹背山」なる島があり景勝地となっているので、ややこしさに輪をかけている。なお和歌浦の「妹背山」は向い合せになっていない。



これが吉野妹背山の妹山(東岸)



こっちが背山(西岸)




 古は神代の昔山跡の、国は都の初めにて、妹背の初め山々の、中を渡るる吉野川、塵も芥も花の山、実に世に遊ぶ歌人の、言の葉草の捨て所
(山の段、冒頭部分)
妹背山婦女庭訓
(歌舞伎)

「妹背山婦女庭訓」とは、天武天皇、中臣鎌足、藤原不比等親子、蘇我蝦夷、入鹿親子らメジャーな登場人物が織りなす、雄大なスケールと詩情豊かなストーリーで有名な歌舞伎の演目。
吉野妹背山は、三段目(山の段)の舞台となる。
親同士が敵対する恋人同士(久我之助と雛鳥)が吉野川を隔てて会えないままに、最後は二人とも死んでしまうという話。
シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」と同じ構図。



谷崎潤一郎の「吉野葛」にでてくる主人公は妹背山を通る時に、芝居で見た「妹背山婦女庭訓」の感想を友人と話している。そして「次は義経千本桜だよ」と機嫌良く歩いている。


現在は妹背橋が架かる。
当時この橋があれば 久我之助と雛鳥の悲劇もおこらなかったのに。







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 流れては妹背の山のなかにおつる吉野の河のよしや世の中 古今和歌集
妹背山の間を吉野川が流れるように、夫婦の間もいろいろ起るが、まあこれが世の中というものだ。






(地図のマークは妹背橋)







う〜ん、何も感想ありません。








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