すさまじきもの 〜歌枕★探訪〜 |
名取川(宮城県名取市)
名勝、名取川。 みちのくの歌枕の中で、ヘビー級までいかないまでもミドル級ぐらいの存在で、えも言えない感慨深さがある。 そんな、みちのくの名取川が東日本大震災で津波に襲われ、大きな被害を出した。 名取川という名称と歌枕の由緒は知っていたが、実際に行ったことがなかったので、想像の対象でしかなかったのだが、震災のテレビ映像に映る名取川は、突如自然が牙をむいた恐ろしい現実であった。 もう、歌枕とかそんなん、どっかに吹っ飛んでしまった。 ![]() これが名取川 冬に行ったから殺風景なのか、それとも震災の影響なのか分からない。 ![]() 県道10号線の閖上大橋 震災映像で、名取川を逆流する津波と、この橋の上に停車するトラックを上空のヘリコプターから撮っていたのが記憶に残っている。 ![]() ここにトラックが停まっていた。すぐ手前の土手に津波がぶち当たっていた。 ![]() この辺りを津波が襲っていた。 なんとも自然の脅威を間近に感じた訪問になった。 こんな名取川を詠んだ歌 |
名取川 瀬々のうもれ木 あらはれば いかにせむとか あひ見そめけむ | 古今和歌集 | |
名取川 やなせの浪ぞ騒ぐなる紅葉やいとどよりてせくらむ | 源重之(新古今和歌集) | |
なとり川きしの紅葉のうつる影は同じ錦を底にさへ敷く | 西行 | |
みちのくに有りといふなるなとり河 なきなとりてはくるしかりけり | 壬生忠岑 |
このように、「無き名を取ることのたとえとして、あるいは瀬々の埋もれ木が現れるごとく名が立つことのたとえ」(歌枕歌ことば辞典)として詠まれている。 名取の橋を詠んだ歌もあった |
同じくは 妹がりゆかば 恋すてふ 名取の橋を 踏まずもあらなん | 多田民治集 |