すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


二本松(福島県二本松市)




「地名に隠された『東京津波』」(谷川彰英、講談社+α新書)の中に福島県二本松市のことが書いてあった。

例えば、福島県に「二本松」という市があるが、その由来は中世の奥州探題・畠山氏の城に日本の霊松があったことによるとされる。これなどは
典型で、
二本の松がなかったら、絶対にこのような地名は生まれない。ところが、時を経ることによって「二本松」という実態は消えていくことがある。しかし、たとえその実態はなくなっても、「二本松」という地名は住民の意識の中に定着し存続していく。それが地名というものの醍醐味である。


ふ〜ん、そのとーりやな。









日本文学史上、二本松といえば高村光太郎の智恵子抄であろう。

新潮日本文学アルバム「高村光太郎」を読んでみた。




読後の感想として、

@そう言えば、高村光太郎って本業は彫刻家だったんや

A智恵子は若くして死んだのではなく、53歳で死んだんや。

Bそんで、「智恵子抄」は光太郎の還暦直前に出版されたんや。


う〜ん、平成の世の中では還暦世代といっても皆若いけど、当時はそれなりの老人だったはず。
青春の若い二人の愛の絶唱だと思っていたので、ちょっとびっくりした。









歌集「智恵子抄」の代表歌の紹介



【樹下の二人】
 


あれが阿多多羅山

あの光るのが阿武隈川

 

かうやって言葉すくなに坐っていると、

うっとりねむるような頭の中に、

ただ遠い世の松風ばかりが薄みどりに吹き渡ります。

この大きな冬のはじめの野山の中に、

あなたと二人静かに燃えて手を組んでゐるよろこびを、

下を見てゐるあの白い雲にかくすのは止しましょう。

あなたは不思議な仙丹を魂の壺にくゆらせて、

ああ、何という幽妙な愛の海ぞこに人を誘ふことか、

ふたり一緒に歩いた十年の季節の展望は、

ただあなたの中に女人の無限を見せるばかり。

無限の境に烟るものこそ、

こんなにも情意に悩む私を清めてくれ、

こんなにも苦渋を身に負ふ私に爽かな若さの泉を注いでくれる。

むしろ魔もののやうに捉へがたい。

妙に変幻するものですね。

 

あれが阿多多羅山

あの光るのが阿武隈川

 

ここはあなたの生まれたふるさと、

あの小さな白壁の点点があなたのうちの酒庫。

それでは足をのびのびと投げ出して、

このがらんと晴れ渡つた北国の木の香に満ちた空気を吸はう。

あなたそのもののやうなこのひいやりと快い、

すんなりと弾力のある雰囲気に肌を洗はう。

私は又あした遠く去る。

あの無頼の都、混沌たる愛憎の渦の中へ、

私の恐れる、しかも執着深いあの人間喜劇のただ中へ。

ここはあなたの生まれたふるさと、

この不思議な別個の肉身を生んだ天地。

まだ松風が吹いてゐます。

もう一度この冬のはじめの物寂しいパノラマの地理を教へて下さい。

 

あれが阿多多羅山

あの光るのが阿武隈川


陸奥の 安達が原の 二本松 松の根方に 人立てる見ゆ 高村光太郎

高村光太郎「智恵子抄」


「智恵子の杜公園」に詩碑



「智恵子の杜公園」にリーフレット










二本松市の智恵子の実家が保存されているので見学に行った。


これが智恵子の生家。造り酒屋だったらしい。
現在では「智恵子記念館」となっている。




酒の銘柄は「花霞」だった。




智恵子の生家から少し山に登ったところに「智恵子の杜公園」が整備されていた。
多分、光太郎が造った彫刻だろうか、たくさんあった。(写真ナシ)




若い頃の光太郎の代表歌「道程」の石碑もあった。




「智恵子の杜公園」から阿武隈川方面












詩は苦手です




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