すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


野上(岐阜県関ケ原町)




更級日記に登場

 のがみといふ所につきぬ。そこにあそびどもいできて、夜ひとよ、うたうたふ〔かどで〕

あそび」は遊女のこと。

更級日記の作者はこの頃まだ少女だったが、遊女たちが夜を通して歌い騒いだ宴会は、楽しい思い出になったようだ。


宿場町だった野上は、遊女の里として有名だったようで、遊女に関係する歌が残っている。


一夜かす野上の里の草枕 結び捨てける人の契りを 藤原定家(六百番歌合)


露しげき野上の里のかり枕しほれていづる袖のわかれ路 冷泉為秀(新拾遺和歌集)


又すさぶ契りもしらで消えかかる野上の露の東雲の空 後小松院(新続古今和歌)


いや〜たしかに「遊女との別れ」系の縁語が頻出!
「一夜」「草枕」「結び」「契り」
「露」「かり寝」「ほれて」「袖」「わかれ路」
「契り」「露〜消え」「東雲」


遊女関連以外では、、

越えて野上のかたを見わたせば霜の草葉に嵐吹くなり 春の深山路

まあとにかく、遊女も含めて旅行者の視点で詠んだものだろう。







能の演目では、「班女」の主人公の花子の出身地として野上の里が登場。
遊女の花子は東国へ旅する吉田少将と一夜限りの恋に落ち、互いに扇を交換してからは毎日ひたすら扇を見つめる日々を過ごし、まったく宴席にも出なくなり、ついに宿から追い出されてしまった。
その後、京都の下鴨神社の糺の森で、手に持っていた扇により、奇跡的に二人は再会。めでたしめでたし。
「それぞと知られ白雪の、扇のつまの形見こそ、妹背の中の情なれ、妹背の中の情なれ」
(班女)








こんな遊女の里の野上宿を訪ねてみた。


旧中山道。松並木があって、街道らしい風景。



これも



もともと「野上宿」だったが、江戸時代には「関ケ原宿」と名称が変わったようだ。
ただし現在の地名は「野上」。




<野上の里の連続写真> 〜旧中山道沿い〜







ごく一般的な、旧街道らしい道であった







木曽路名所図会「関ケ原 野上里」

(早稲田大学図書館)






木曽街道六十九次「関ケ原宿」(歌川広重)

(WIKIPEDIA)













野上の里から東海道本線が見えた。(特急しらさぎ)






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