すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


野中の清水(和歌山県田辺市))




熊野古道の中辺路を本宮に向かって歩いていくと、近露王子を超えてからはゆるやかな坂がずっと続き、ふと木々の間から眺めるとはるか下の方に国道を走っている車が見えるほど高度が上がっている。
茶店などが出てきたら、左手に継桜王子がある。巨大な杉の木に驚かされるが、さらに石段の急登を上っていくと小さな祠がある。

そんな継桜王子のすぐ下に「野中の清水」がある。

え〜、野中って、野原の真ん中ということなので、全然この場所にマッチしていない。

こんな感じ


写真だけでは分かりにくいが、急斜面にある。



Googleのストリートビューを埋めこんだけど、見えるかな?



赤い欄干は、景勝地ムードを高めている。

けれども、やはり“野中”ではなく、どう見ても“谷筋に流れている水を堰き止めた池”というかんじ。



ネーミングには?マークがつくが、史跡としては素晴らしいものであった。



これも。
この手のマニアが泣いて喜びそうなダブルの水汲み場。











え〜と、古典の世界では、「野中の清水」は播磨の印南野にあることになっている。数年前に私も訪問したが、周りは一面の田んぼであった。まさに『野中』であった。
そのほかに、大和の布留野や、河内の交野という説もある。
また「野中の清水」を一般名詞として、場所不明とする考えもある。

このような中、中辺路の「野中の清水」であるが、江戸時代の地誌である「熊野巡覧記」に野中村として、次の歌が記されている。

いにしへの野中の清水ぬるけれど もとの心を志るひとぞくむ 古今和歌集

まあ、熊野巡覧記のとおり、ここは野中村で、野中村の清水という訳で、地形は関係ないのだろう。たまたま古今和歌集に「野中の清水」という歌があり、勝手に“オレ達の歌”にしてしまったのだろう。
ちなみに、現在の住所も「田辺市中辺路町野中」である。





さて、野中の清水の傍らに歌碑と句碑が並んでいた。

いにしへのすめらみかども中辺路をこへたまひたりのこる真清水 斎藤茂吉


野中の清水の傍らに歌碑



住かねて道まで出るか山清水 服部嵐雪


野中の清水の傍らに句碑














熊野古道を歩いたときに寄りましたが、あまり覚えていません。






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