すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


野宮(京都市右京区)




源氏物語の「賢木」、
光源氏との結婚をあきらめ、娘の斎宮ととともに伊勢に下ることを決心した六条御息所は身を清めるために嵯峨の野宮に籠った。
光源氏は六条御息所に対しつれない態度をとっていたが、いざ御出立となるとさすがに辛いものがあり、秋の草木がすっかり枯れた頃、嵯峨野の野宮へ訪ねて行った。



いや〜光源氏の気持ちも良く分かる。
億劫な相手でも、いざ別れてしまうとなれば、追いかけたくなるもの。



野宮で、なかなか光源氏に会おうとしない六条御息所。、
光源氏は御簾の下から榊の枝を差し入れたのに対し、六条御息所は


神垣はしるしの杉もなきものを いかにまがえて折れる榊ぞ 六条御息所(源氏物語)
野宮の神垣には目印となる杉の木もないのに、
どうして間違えて折られた榊なんでしょうか


これに対し、光源氏は


少女子があたりと思えば榊葉の 香を懐かしみとめてこそ折れ 光源氏(源氏物語)
神にお仕えする幼い斎宮のいる辺りと思えば、
榊葉の香りがなつかしくて折ってきました 


と返す。
そして、朝まで二人は語り明かしたという。



源氏物語の旧蹟の碑があった



源氏物語の名場面だが、
光源氏としては六条御息所の娘(後の秋好中宮)も年頃なのでチェックしておきたいという考えもあったはず。











伊勢斎王が身を清められた野宮は、現在は野宮神社になっている。
嵯峨野の観光の際に、野宮神社へ訪問した。


【野宮神社】 ・・・ 京都市右京区嵯峨野宮町1


うわ〜、人がいっぱい!
源氏物語ファンなのかな?



せまい境内に溢れんばかりの人!



そんなに有名なところなのかな?



「野宮じゅうたん苔」の庭園は立入禁止。






野宮神社といえば、「黒木の鳥居」と「小柴垣」(らしい)、
源氏物語の「賢木」の巻にも登場する。
 物はかなげなる小柴を大垣にて、板屋ども、あたりあたり、いと、かりそめなり。黒木の鳥居どもは、さすがに神々しう見渡されて、わづらわしき気色なるに、神官の者ども、ここかしこにうちしはぶきて、おのがどち、物うち言ひたるけはひなども、外にはさま変りて見ゆ。
上記の光源氏が六条御息所を訪ねる場面である。



「黒木の鳥居」、これはクヌギの原木をそのまま使っている。最古の鳥居の形式という。



「小柴垣」


言われて見ないとよく分からないが、この二つは野宮神社のシンボルになっている。




都名所図会の「野々宮」の挿図にも、しっかりと黒木鳥居と小柴垣が描かれている。


国際日本文化研究センター













この源氏と六条御息所の逢瀬の場面をモチーフにして、能「野宮」が作られた。ここは能「野宮」の謡蹟でもある。












なんでこの神社がそんなに人気あるのか、今もってわかりません。






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