すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


尾駮の牧(宮城県石巻市)




「おぶちのまき」と読むのだが、一般的に「尾駮の牧」は青森県下北半島の六ヶ所村のことだろう。


ところが、宮城県石巻市にも「尾駮の牧」の歌枕がある。しかも奥の細道で松尾芭蕉が石巻に行った場面に歌枕として登場する。


思うに、江戸時代に仙台藩四代藩主伊達綱村は藩内の歌枕を整備したが、その際にいろんな歌枕をもってきて、藩内の歌枕として勝手に認定したのだろう。


その他、どうも変だなと思う歌枕

@沖の石(多賀城市)・・・奈良時代にはすでに陸地になっていた。福井県小浜市にも比定地があるが、多分「沖の石」は一般名詞で特定の地を詠んだのではないのだろう。(これを言ったらおしまいだが)

A真野の萱原(石巻市)・・・福島県南相馬市が有力とされている。

B玉田横野(仙台市)・・・摂津や河内の歌枕とされている。玉田横野は奥の細道に登場するが、じっさい仙台市内のどこなのか分からない。

Cおもわくの橋(多賀城市)
・・・西行の歌を無理やり歌枕として特定したのではないのかな

D袖の渡り(石巻市)・・・石巻から旧北上川を渡る渡し場。ここがそれほど重要な渡し場とは思えない。涙川との組合せも不自然。

E壺の碑(多賀城市)・・・冷静に考えると強引な歌枕。


これらの歌枕を松尾芭蕉が奥の細道に「みちのくの歌枕の地」として記載したので、本物の歌枕のように現在に伝わったのだろう。



ただし、
全国の多くの歌枕が江戸時代に観光のための名勝地として整備されたものなので、こんな検証は意味がないというか、そもそもこのホームページも存在意義がなくなってしまうので、ここまでとする。









そんな「尾駮の牧」を宮城県に旅行した際に、石巻の旧北上川から遠望してきた。


石巻の旧北上川の東の牧山。
牧山の麓が「尾駮の牧」らしい。
「牧」と言うからには馬の産地なのだが、この地形で放牧できるのか。
 



旧北上川の上流方向。川の向かいに牧山。
う〜ん、この地形で馬は育たないだろう。
※手前の小島は「袖の渡り」





こんな「尾駮の牧」ゆかりの歌



みちのくのをぶちの駒も野がふにはあれこそまされなつく物かは 後撰和歌集

牧山の頂上に歌碑があるらしい




 








もともとこの地に「牧山」という山があって、仙台藩が
それを「尾駮の牧」だということで認定したのだろう。

そんなところに私も喜んで訪ねて行ったということ。




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