すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


老松社(京都市上京区)




<老松>は、長寿を祝う能の演目。
<高砂>と並び目出度い縁起の良い演目の代表とされてきた。




【仕舞(キリ)の部分】

これは老木の 神松
千代に八千代に さざれ石の
巌となりて 苔のむすまで

苔のむすまで松竹 鶴亀の
齢を授くる この君の
行く末守れと わが神託の
告げを知らする 松風も梅も
久しき春こそ めでたけれ

松竹梅に、鶴亀と、縁起の良いアイコンを散りばめたり、さざれ石が巌になって苔がむすまでと「君が代」チックだったり、ん〜、なんと言うか〜


まあ、新春の初番目物は退屈な内容のものが多いと相場は決まっている。結婚式披露宴で謡っても、だれも聞いちゃいない状態だろう。


<老松>のエピソードとして、
太宰府に流されることとなった菅原道真公は、自宅の梅の木に向かって、
東風吹かば匂ひおこせよの花 主無しとて春を忘るな
と詠んだ。すると、道真公を慕って梅は太宰府の配所まで飛んできた。
これが有名な「飛び梅」伝説。
じつは京都の道真公の自宅には、梅と並んで桜と松とが生えていた。
梅が太宰府へ飛んで行った後、桜の木は、道真公が梅にだけ歌を詠んで桜には何も言葉がなかったことを悲嘆し、ついには枯れてしまった。
その悲報を配所で聞いた道真公は、
は飛びは枯るる世の中に 何とてのつれなかるらん
と詠んだ。すると、こんどは道真公に「つれない」と咎めを受けた松が、梅の後を追って同じく太宰府へとやってきた。
これを「追い松(おいまつ)」といい、のちに同音の<老松>に転じたもの。


この大宰府にあった「老松」と「飛び梅」(紅梅殿)が神霊となって登場し、長寿を寿ぐ舞曲を舞うシーンがクライマックス。


このように、能<老松>は大宰府が舞台である。







さて、後日談なのか、別のエピソードというか、よく分からないが、
大宰府に配流された道真公は、家臣の忠臣翁に松の種を持たせて、北野天満宮に撒くように託した。その後に道真公の神霊がこの地に降臨した際に、多数の松が一夜に生じたという伝説がある。
追いかけていった「追い松」が帰ってきたのか?



北野天満宮の摂社・末社のうちに老松社がある。北野天満宮訪問の際に訪ねてみた。




【老松社】



これが老松社。
楼門を入って、参道を歩いていくと、左手にある。



老松社訪問という目的を果たしたので、ひと安心。



北野天満宮の本殿の後ろにも老松社があった。



これといった感動もなく、写真撮影






【北野天満宮 本殿】

本殿の前には梅(左)と松(右)が植えられていた。
ここでは梅ではなく桜、橘でなく松となっている。
天満宮の梅は有名だが、松はどうかな?






境内で老松を探したが、あまり見当たらなかった。


これなんか、かなり傾いていて、老いた松っぽい姿である。



楼門の傍らにあった松。これも老松だろう。



楼門から外を眺める。
老松ではないが、若松でもない松が見えた。





こんな老松社を詠んだ歌


年つもる名も老松の神なれば雪にや跡をたれはじめけん 飛鳥井雅世



ん〜、なんともよく分からない歌である。











さて、こちらは昔の参道沿いにある菓子作りの老舗「老松」

ホームページで見たが、いろいろとすごい店のようだ。
















この中で。2番と8番の老松社に訪問、写真を撮る。
さらに帰宅後に17番にも老松社があることを発見。





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