すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


雄島(宮城県松島町)







日本三景松島にある名勝地の雄島は、松島湾に浮かぶ島である。
れっきとした島であるが、奥の細道には、

雄島が磯は地つゞきて海に出たる島也

と、地続きであると描写されている。
多分、旅が終わって旅行記「奥の細道」をまとめている際に勘違いしたのだろう。




古来、多くの和歌に詠まれた「松島の雄島」に行ってきた。
(2016年1月に訪問)


松島海岸から歩いて行くと、こんな感じで岩を削って道が作られていた。
岩を削る作業は大変だったろうが、岩を見てみると、これは凝灰岩かな?加工しやすそうな岩であった。




雄島には渡月橋で渡る。




もとの渡月橋は東日本大震災の津波で破壊されたのだが、関係者の努力で2013年に再建されたもの。欄干がまぶしいくらいに赤い。
島に渡ったところの崖には岩窟が見える。むかし僧たちが修行した跡。島じゅうにこのような岩窟が彫られている。




渡月橋からの眺め。雄島に生えている松が美しい。




これは雄島から海を眺めた写真。
撮影した時は、芸術的な写真が撮れたと思ったが、こんな感じであった。



ここは松島観光の中心地から少し離れているためか、ほとんど観光客がいなかった。




こんな雄島に芭蕉と曽良の句碑があった。





朝よさを誰(たが)まつしまぞ片心 芭蕉
松島や鶴に身をかれほとゝぎす 曽良



芭蕉の句は奥の細道にはない。松島と待つを掛けている。
とくに「雄島」ではなく、松島として詠んだもののようだ。









このページを作る時まで忘れていたが、「雄島」は百人一首でも詠われている。


見せばやな雄島の海人の袖だにも濡れにぞ濡れし色は変わらず 殷富門院大輔(百人一首)
あなたに見せたいものです。松島にある雄島の漁師の袖でさえ、波をかぶって濡れに濡れても
色は変わらないというのに。私は涙を流しすぎて血の涙が出て、涙を拭く袖の色が変わって
しまいました。(小倉山荘ホームページ)


いやはや、あんまり印象に残らない歌である。特に感想なし。






その他の「雄島」ゆかりの歌


松島雄島の磯にあさりせし海人の袖こそかくはぬれしか 源重之(後拾遺集)
たちかへり又も来て見ん松島雄島の苫屋波に荒らすな 藤原俊成(新古今集)
松島雄島の磯の秋の空名高き月や照りまさるらん 伊達政宗





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とてもすごい場所でしたが、観光地としては
もう少しパンチがいるような気がします。





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