すさまじきもの ~歌枕探訪~


岡の湊(福岡県芦屋町)







NHKの旅番組「小さな旅」に福岡県の芦屋港が登場。
なんとこの港の漁師さんの苗字はみんな「中西さん」という。
と言って、それ以上に掘り下げるわけでもなく、近所の人との濃厚な付き合いや、夫を亡くした後に一生懸命生きてきた未亡人の姿など、ヒューマンドキュメンタリーに仕上げていた。


芦屋は遠賀川河口の港町として発展し、かつては「芦屋千軒 関千軒」と称されて、山口県の下関と並ぶような殷賑ぶりであったという。


そして芦屋は能の「砧」のゆかりの地である。
都に訴訟に行ってなかなか帰らない夫(芦屋某)が心配で、残された妻は辛い思いを慰めるべく砧を打つ。その果てに死んでしまうが、急遽返ってきた夫に亡霊となって現れて恨みつらみを訴えるも、最後は成仏するという話。
あんまり知らない演目であるが、そこそこ有名である。
芦屋のどこかに謡蹟として整備されているのだろうか。


そんな芦屋であるが、昔は「岡の湊」と呼ばれていた。
万葉集でも詠まれている。


天霧らひ ひかた吹くらし 水茎の 岡の港に 波立ちわたる 万葉集


霧が出て東風が吹いている、岡の湊は波立っている、という内容。
多分もっと深い意味があるのだろう。



岡の湊という名の「岡湊神社」があったので、なにかあるかなと思って訪れたが、なにもなかった。


岡湊神社 ・・・ 福岡県遠賀郡芦屋町船頭町11−21

鳥居



社殿





岡の湊は、貝原益軒が「岡湊十二景」として賞したらしく、素晴らしい絶景が広がっていたようだ。
現在もなかなか良い景色があった。



遠賀川の河口付近。向こうが海。手前に内湾が広がり、昔は良港だったのだろう。



これも内湾。



これも。
明治時代に鉄道の路線から遠く離れてしまい、過疎化が進んだ結果、あまり開発されてこなかったらしい。














実にマイナーなところでした。






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