すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


大沼の浮島(山形県朝日町)







よくこんな辺鄙なとこまでやってきたもんだ。

「大沼」というのだから、高原や湿地帯を想像していて、そのため大沼へのアクセスも爽快なドライブウェーかと思っていた。

実際は、V字渓谷を遡っていくような山道を走り、地図上の距離以上の距離を感じた。それも当然であった、その道は新潟と山形の県境の朝日連峰に通じる道だったのだ。

そんな山奥の、山を上ったところに大沼の浮島があった。

天武帝9年(681年)、修験僧によって発見されたとのこと。鎌倉幕府や徳川幕府の祈願所とされた歴史がある。現在では国の名勝地に指定されている。

しかしまあ、よく現在まで土砂によって埋まったりしなかったもんだ。流入する川が小さいのかな。
この大沼の特長は浮島。大小60余りの浮島が浮遊している。これら浮島の一つ一つに日本各地の国名が付けられていたというのだから、すごい話だ。

こんなすごい観光地であるが、アクセスが悪いためか、それとも東北にはもっとすごい観光地がたくさんあるためか、かなりマイナーな存在となっている。今回の訪問時も、他に観光客はいなかった。






【大沼の浮島】


観光案内図
大沼を一周するハイキングコースもあった。



駐車場から歩いていくと、浮島稲荷神社が現れる。
昔は修験僧たちが修行をしていたのだろう。



カササギ橋。
彦星と織姫星が年に一度出会うという伝説の橋が、なんでここにあるのだろうか。



風景@



風景A



と、歩いていくと、芭蕉庵があった。
松尾芭蕉はここに来ていないのだが。
庵の中に句碑があった。

旅に病で 夢は枯野を かけ巡る 松尾芭蕉

しま遊ぶ ゆめの行方や 露時雨 鸞窓

芭蕉の句「旅に病んで〜」は、大阪で客死した際の辞世なので、大沼とは関係がないと思うのだが。
もう一つの句の作者、鸞窓とは、江戸時代の大沼稲荷神社の別当だった人らしい。






そうこうしているうちに、大雨が降ってきた。
それを機に帰ることにした。



「鳥居杉」というらしい





大沼の浮島を詠んだ歌が残っている。


祈りつつ名をこそ頼め 道の奥に沈めたまふな 浮島の神 橘為仲


四方の海 波静かなる しるしにや 心もうきて 遊ぶ島かな 藤原実方


「浮く島という名にあやかりたい」、「浮島なので心もウキウキ」って感じ。
詠み手の橘為仲も藤原実方も実際に陸奥国に赴任していた人物。ここまでやってきたのだろうか。

一方、京の都で浮島を詠んだ歌はあるのかな。














ヘビとかが出てきそうで、恐ろしかったです






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