すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


音無川(和歌山県田辺市)




音に聞く、音無川を訪ねた。




国道168号線の本宮近くの橋から撮影




上流方向。水が流れてないよ!




下流方向。熊野本宮の大鳥居が見える。この先で熊野川に注ぐ。




水が流れていないので、水音が聞こえないから「音無川」になったのかな? と思っていたら、何かの本で「音無の里」を流れる川なので「音無川」になったと説明があった。
ふ〜ん。




よくわからない写真だが、これは音無川に架かる橋の上
から本宮の町並みを撮ったもの。



はるばるとさかしき峰を分けすぎて音無川をけふ見つるかな 後鳥羽院
(私訳)はるばる険しい山を通ってきて、今日、音無川を見つけたよ 


熊野本宮入口に歌碑






その他、音無の川、滝、里などを詠んだ歌


音無の川とぞつひに流れ出づるいはで物思ふ人の涙は 清原元輔(拾遺集)
音なしに咲きそめにける梅の花にほはざりせばいかで知らまし 後嵯峨法皇
恋ひ侘びぬ音をだに泣かん声たてていづこなるらん音無の滝 よみ人しらず(拾遺集)
氷みな水といふ水はとぢつれば冬はいづくも音無の里 和泉式部
熊野なるおとなし川を渡さばや ささやきのはし しのびしのびに  能因法師









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【後日談】

上記の音無川を撮影したポイントにある橋は「ささやき橋」という。
「音無川」と「ささやき橋」の組合せは絶妙であるが、なんとなんと、同じ組み合わせが東北福島県の郡山市に存在する。
2016年1月、私はみちのく一人旅に出掛け、みちのくの「音無川」と「ささやき橋」を訪ねてきた。
どこにでもあるような川と橋であったが、傍らにとても立派な石碑が建っていて、説明文で天平時代の男女の恋のエピソードを紹介していた。

ところが、その地で詠まれたとされる歌として、上記の能因法師の、
熊野なるおとなし川を渡さばや ささやきのはし しのびしのびに
の冒頭部分をみちのくバージョンに変更した、
みちのくおとなし川を渡さばや ささやきのはし しのびしのびに
が紹介されていたりして、どっちが本家か分からない。


まあどっちでもいいのだが。


本ホームページに福島県郡山市の「ささやき橋」のページがありますので、ぜひご参照ください。