すさまじきもの 〜歌枕★探訪〜 |
大淀(三重県明和町)
伊勢物語、六十九段、狩の使、 「男、血の涙を流」して泣く泣く伊勢斎宮の斎王と別れ、次の任務先の尾張の国へ行かねばならなかった。 伊勢に残された女が詠んだ。(七十二段、大淀の松) |
大淀の松はつらくもあらなくにうらみてのみもかへる浪かな | 在原業平(伊勢物語) | |
あなたが船出をなさる大淀、その大淀の松、すなわち私は決して あなたに対してひどい仕打ちもいたしませんのに、浦を見ながら 寄せては返る浪であることよ、あなたは私に恨みを言うばかりで お帰りになるのですね。(新版 伊勢物語 門川ソフィア文庫) |
在原業平と斎王の一夜の恋は、伊勢物語の中の最大のエピソード。 伊勢参宮名所図会にも絵図が描かれている。 早稲田大学図書館 続く七十五段にも男と女が相聞歌を往来させている。 その中で、女、 |
大淀の浜に生ふてふみるからに心はなぎぬ語らはねども | 伊勢物語 |
地元では、別れの朝に在原業平を見送りに斎王が大淀の松林まで見送りに来て、別れの歌を詠み交わしたとしている。(明和町大淀郷土史) ※伊勢物語では斎宮の寮の中で歌を交換している。 |
徒歩(かち)人の渡れど濡れぬ江にしあれば | 女 |
またあふ坂の関は越えなむ | 男 |
そんな伊勢物語の聖地、大淀に行ってきた。 大淀海岸、二見方面を望む 松阪方面。 堤防ができて、松がなくなった。 【業平松】 古くから大淀の名勝地「大淀八景」の中に、「業平松の夜の雨」が選ばれている。 現在では大淀の漁港の近くに公園として整備されている。 訪問したのは晴れの日の午後であった。 「天然記念物 大淀の松」とあった。 これが「業平松」。 一般的な松であった。 なぜか「行平松」も横にあった。 行平は業平の兄。大淀となにか関係あるのかな? 公園の奥の方にひっそりと歌碑があった。 |
大淀の浦に立つ浪歸らずは 松の變らぬ色を見ましや | 女御徽子女王(新古今) |
伊勢の海のをののふるえに朽ちはてで都のかたへ帰れとぞ思ふ | 源俊頼(金葉和歌集) |
伊勢参宮名所図会の「大淀浜」 早稲田大学図書館 田んぼが広がっている。 現在の大淀の内陸部 大規模な稲作が経営されていた。 ここならTPPが発効しても心配いらないだろう。 |