すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


逆川(和歌山県湯浅町)




大阪から紀伊田辺方面へ南下する熊野古道の紀伊路を歩いていくと、さまざまな川を渡ることになるが、どの川の流れも東から西、進行方向の左から右に流れる。これは川の西側に海があって流れ込んでいるのであるから当然といえば当然。
ところが、和歌山県湯浅町では西から東に向かって流れる川がある。
道の西側(海側)に山があるためで、理由が分かれば何ともないのであるが、古来「逆川」と呼ばれて、熊野古道を往来する人々によって親しまれてきた。



こんなかんじ

これは熊野古道から東に向かって撮影。
手前から向こうへ川は流れている。



これは向こう(西)から手前(東)へ流れている



そしてこれは手前(西)から向こう(東)へ流れている。




写真を撮ってきたが、どっちがどっちか分からなくなり、グーグルのストリートビューで確認した。


といっても、今や畑の中を流れる三面コンクリートの小川になっていて、情緒や感興をそそられるものではない。


そんな逆川を詠んだ歌


聞きわたる名さへうらめし熊野路逆川の瀬をいかにかはせん 藤原為家(夫木和歌抄)


飛び違ふ夜半の蛍の光にて逆川の瀬とはしらるゝ 源淳国
(私訳)夜中、飛びちがうホタルの光で逆川だとわかった




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以前、真夏にヨメと娘と三人で熊野古道を紀伊宮原から湯浅まで歩いた。
ジュースを買い忘れたが、糸我峠を越えて逆川の集落まで行けば自販機があるだろうと娘に説明していたが、町じゅう探しても結局自販機はなく、そのまま大急ぎで湯浅まで歩き通した苦い思い出がある。
さんざん娘に文句を言われた。



逆川王子(遙拝所跡)



「逆川巡礼橋」碑











普通の川なのに、ストーリーがあれば由緒深く思えてくる。
能書きって大事やな。





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