すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


さらし井(埼玉県美里町)








埼玉県の万葉史跡、県指定旧跡。

さらし井は、枌木(ねりぎ)川の端に岩石で囲まれた井戸。

その昔、織布を洗いさらすために使用した湧水で、ここでさらされた布は、多く調庸布(ちょうようふ)として朝廷に献納されたと伝えられる。


三栗の中にめぐれる曝井(さらしい)の絶えず通はむそこに妻もが 万葉集


ここは、いかなる干魃にも涸れることなく、千数百年の昔から湧水がさらさらと流れており、当時の婦人たちの共同作業場でもあり、この万葉歌にもあるように悩みを訴え愛を語る社交の場でもあったことがうかがえる。
(参考:美里町教育委員会の説明板)

え〜と、布をさらしたので、「さらし井」







■ 現地の様子


橋を渡ったところに史跡が整備されていた



川と史跡の位置関係



歌碑と石碑



川の傍らに湧水があり、ここで布をさらして調庸布を作っていた



湧水





すぐそばの、川の水に布をさらしてもよかったのではないか、と思った。












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さらし井から西へ200メートルのところに別の万葉史跡がある。

この辺りは大字広木字御所ノ内と呼ばれている。

堀型の田畑に囲まれた九十メートル四方の遺跡が、防人檜前舎人石前の館跡といわれている。

真足女は、檜前舎人石前の妻で、防人に赴くことになった夫に、この悲しい別れに臨んで、惜別の情を詠じた。


まくら大刀腰にとりはきかなしきせろかまきこむ月のしらなく 万葉集


夫を思慕する妻の心情を遺憾なく吐露したもので一二〇〇余年後の今日でも、なお切々として人の心を打ってやまない。
(参考:美里町教育委員会の説明板)








■ 現地の様子


ここが檜前舎人石前の館跡
九十メートル四方というから相当広い



史跡が整備されている



万葉歌碑





一二〇〇年以上も前の防人の家の場所をよく特定できたものだと感心する。










「さらし井」は茨城県の水戸市にも比定地があるらしいです





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