すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


猿沢池(奈良市)




猿沢池と興福寺五重塔と池畔の柳、
奈良公園を象徴する風景である。

もう少しカメラの腕があれば!!と思う写真です。


猿沢池といえば、大和物語の「采女」がある。
さらにこれを題材にして能「采女」ができた。
奈良時代、天皇のお側に仕えていた女性を采女と言うが、ある采女は一度天皇に召されたものの、その後召されないことを悲しんで猿沢池に身を投げたというもの。
采女の入水を知った天皇は猿沢池に駆けつけ、歌を詠んだ 

猿沢の池もつらしな吾妹子がたまもかづかば水ぞひなまし 大和物語
(私訳)猿沢の池はつらいもんだ。
愛する乙女が入水し、水藻をかぶった時に、池の水が干上がったらよかったのに。


天皇に同行した柿本人麻呂も次の歌を詠った

わぎもこのねくたれ髪を猿沢の池の玉藻とみるぞかなしき 柿本人麿(大和物語)
(私訳)愛する乙女の寝乱れた髪のような、猿沢池の藻を見るのは本当に悲しい。








*枕草子にも采女の記述がある

猿沢の池は、采女の身投げたるをきこしめして、行幸などありけむこそ、いみじうめでたけれ。「寝くたれ髪を」と、人麿が詠みけむほどなど思ふに、いふもおろかなり。 (三十五段) 







采女が入水するときに着ていた衣を掛けたという、「衣かけ柳」


「衣掛け柳」(左)と九重塔と「采女地蔵」(中)と「衣掛け柳の碑」(右)


池畔にある「采女神社」





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以上の伝説を踏まえて、

身をなげた名所めでたる 正岡子規









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采女の伝説とか知らなくても十分すごい猿沢池の風景でした。







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