すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


飾磨(兵庫県姫路市)




「飾磨」は「しかま」と読む。
播磨国風土記にも出てくるほど古い地名で、由来は「鹿がいて啼いた」とされる。
現在では姫路市南部で臨海工業地帯を有する中心的な町となっている。




和歌の題材としては、「飾磨の川」と「飾磨の市」と「飾磨の染め物」





【飾磨の川】

現在の船場川らしい。

姫路市東部を流れる市川の支流。



国道250号線の橋から下流を撮影。
遠くに見える赤い橋が「思案橋」。
菅原道真公が太宰府に流されるとき、ここに上陸して思案した伝承がある。
この辺りまで海が迫っていたようだ。


わたつみの海に出でたる飾磨川絶えむ日にこそ我が恋やまめ 万葉集


わたつみの海にいでたる飾磨川絶えむの心わが思はなくに 万葉集


水上にいくむらさめか飾磨川濁りは海に出でて来にけり 細川幽斎





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【飾磨の市】


「飾磨の市」を詠んだ歌も多い。この辺りに市が立っていたのか。
現在ではイオンモール姫路リバーシティーが開業し、広い商圏から客を集めている。


兵庫県姫路市飾磨区細江2560番地



昔の人もびっくり


なき名こそしかまの市に立ちにけれまだあひ初めぬ戀するものを 西行


恋をのみ飾磨の市に立つ民の絶えぬ思ひに身をや替へてむ 藤原俊成(千載和歌集)





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【飾磨の染め物】


現在でも飾磨の(かち)染めが名産品になっているらしい。
縁語で「染む」を詠んだり、「徒歩(かち)」を掛詞にした。
あまり染め物に興味がないのでパス。


わが恋はあひそめてこそまさりけれ飾磨の褐(かち)の色ならねども 藤原道経(詞花和歌集)


播磨なる飾磨に染むるあながちに人を恋しと思ふころかな 詞花和歌集

















いろいろと書いてきたが、やはり飾磨と言えば「(いち)」なのかな




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