すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


白糸の滝(山形県戸沢村)





いやはや便利になったものだ。
インターネットに「日本文学電子図書館(J-TEXT)」というのがあって、さまざまな古典の原文テキストが搭載されている。
図書館で借りてくる古くて重い書籍に比べると、少々味気がないが、横書きを縦書きに変換して印刷すれば、立派なテキストになる。

その電子図書館に「義経記」もあった。

都を追われた源義経たちは北陸経由で奥州に向かった。鼠ヶ関から出羽の国に入って、最上川を船で遡上して行く。その途上、山の中腹より激しく落ちる滝があった。

義経の北の方「是をば何の滝と言ふぞ」と問ひ給へば、白糸の滝と申しければ、北の方かくぞ続け給ふ。

最上川瀬々の岩波堰き止めよ寄らでぞ通る白糸の滝 義経北の方(義経記)

最上川岩越す波に月冴えて夜面白き白糸の滝 義経北の方(義経記)






最上川と名瀑と源義経。
役者が揃ったような名所旧跡と言えよう。
そんな観光スポットなので、滝の対岸の国道沿いにはドライブインがあった。


「白糸の滝 ドライブイン」



二階にパーラーがあって、滝を眺めることができる。



これが白糸の滝。
水の量が少ない。
訪問した日の翌日から大雨洪水警報が出て大変なことになるのだが、この日までは日照りが続いていた。



滝の下には不動堂が見える。



段々になって落ちる段爆タイプの滝。落差は120メートル。

奥の細道では、「白糸の滝は青葉の隙々に落て、仙人堂、岸に臨て立。水みなぎつて舟あやうし。」 とある。




明治時代、正岡子規は、最上川を船で下って白糸の滝を見物している。子規はそれまで木曽川の川下りが最も素晴らしいと考えていたようだが、最上川に比べたら「幽邃峻奥の趣き」が乏しいとして、この期に及んで最上川に軍配を上げている。(はて知らずの記)

立ちこめて尾上もわかぬ暁の霧より落つる白糸の瀧 正岡子規(はて知らずの記)





現在では、最上川下りの観光船が就航していて、観光客の人気を集めている。
白糸の滝は船から見るのが一番であろう。












ある滝マニアのホームページでは、この白糸の滝の難易度は
「超初級」でした。理由は対岸の駐車場から見ることができるので。






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