すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


白川(熊本市西区)





熊本県の阿蘇山から流れだし、西流して熊本市から有明海に注ぐのが白川で、「白川のほとり」は能「檜垣」の謡蹟である。

能の演目で老女物のトップスリーは「姥捨」「関寺小町」そして「檜垣」であり三老女と呼ばれている。

「檜垣」のシテの老女は、もともと大宰府の白拍子で、美貌と舞の上手を誇っていたが、男どもを悩ました罪により地獄に落ち、因果により水を汲まされるという苦悩を語る。

老女の嘆きの口上を聞くのは実にしんどく、あまり興味がないのだが、せっかく熊本まで行ったので、ゆかりの地を訪問した。




■ 蓮台寺 ・・・ 熊本市西区蓮台寺2-10-1


白川のほとりにある蓮台寺は、檜垣媼が草庵を結んだ地とされている。
「檜垣寺」の別称がある。



境内に「檜垣の塔」があるらしいが、なんとなく入りにくい雰囲気であった。



蓮台寺の南側に「檜垣の井戸」の旧跡がある。



檜垣媼はこの井戸で水を汲んで、岩戸山まで運んでいたらしい。岩戸山はここから西に10キロくらいの山で、100歳を過ぎた檜垣媼が運んでいくのは大変なことだったろう。



蓮台寺の裏に白川が流れていた。








檜垣媼は、若い頃の黒髪が年老いて「白川」のような白髪になったとする。
三通りの歌が伝わっているが、内容は同じようなもの。


おいはてて頭の髪は白川の 水は汲むまでなりにけるかな 檜垣嫗集

年ふればわが黒髪も白川の 水は汲むまで老いにけるかな 檜垣嫗(後撰和歌集)

むばたまのわが黒髪は白川の 水は汲むまでなりにけるかな 檜垣嫗(大和物語)



清少納言の父親の清川元輔は肥後守を務めていたが、若い頃の檜垣と何らかの関係があったらしい。
清川元輔が檜垣に送った歌

白川の底の水ひて塵立たむ時にぞ君を思い忘れん 清原元輔



















白川から白髪って、とても分かりやすいです。






copyright(C)2012 すさまじきもの〜「歌枕」ゆかりの地☆探訪〜 all rights reserved.