すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


賤ヶ岳(しずがたけ)(滋賀県長浜市)




賤ケ岳は歴史上、「賤ケ岳の戦い」で有名。

Wikipedia 「賤ヶ岳の戦い」 によると、
賤ヶ岳の戦い(しずがたけのたたかい)は、天正11年(1583年)4月、近江国伊香郡(現:滋賀県長浜市)の賤ヶ岳付近で起きた羽柴秀吉と柴田勝家の戦いである。この戦いは織田勢力を二分する激しいものとなり、これに勝利した秀吉は亡き織田信長が築き上げた権力と体制を継承し天下人への第一歩がひらかれた。「賤ヶ岳の戦い」
とある。


双方の戦力は、こんな感じ。
■交戦勢力
羽柴軍 柴田軍
■指導者・指揮官
羽柴秀吉  柴田勝家
羽柴秀長  佐久間盛政
丹羽長秀  前田利家
織田信雄 
黒田孝高 
前野長康 
中川清秀 
加藤清正 
福島正則 
石田三成 
■戦力
50,000 30,000




えーと、
戦国時代の合戦の記録は戦国マニア達のホームページに任せるとしよう。









本ホームページは和歌を中心とした古典からのアプローチなので、そっち方面から言うと、・ ・ ・



「賤ケ岳」の古称は「伊香山」。

「伊香山」と書いて「いかぐやま」と読むとか。

麓に現在も「伊香具神社」が鎮座しており、賤ケ岳の中腹に奥宮がある。

そんな「伊香山」を詠んだ歌が万葉集にある。





笠朝臣金村伊香山作歌二首
(笠金村が伊香山で作った歌二首)

草枕 旅行く人も 行き触れば にほひぬべくも 咲ける萩かも 笠金村(万葉集)


伊香山 野辺に咲きたる 萩見れば 君が家なる 尾花し思ほゆ 笠金村(万葉集)




JR北陸線の車窓から撮影



JR北陸線の木ノ本駅から撮影




今回は電車に乗りながらの撮影であり、いかにもチープな写真となった。

ただし賤ケ岳の頂上からの見晴らしは、極めて景趣に優れたものであるらしく、「琵琶湖八景」にも賤ケ岳からの新雪風景の眺望が「新雪 賤ヶ岳の大観」として選出されている。

麓から頂上までリフトが営業しており、ぜひ機会を見つけて行ってみたい。

なお、頂上には上記の「「草枕〜」の万葉歌碑が設置されている。

また、「伊香山〜」の方の万葉歌碑は長浜市役所 木之本支所の前に設置されているとのこと。











JRの大回り乗車をしました。












【 追 記 】



2024年6月、賤ヶ岳の山麓に鎮座する伊香具神社を訪問した。




伊香具神社は天武天皇白鳳年間に創建されたと伝えられる延喜式内社。

祭神は伊香津臣命(いかつおみこと)で、羽衣を取られ天に帰れなくなった天女と結ばれたという羽衣伝説の主人公伊香刀美(いかとみ)と同一とされる。

湖北随一の名社とされ、都の宮廷人からの尊崇も厚かったという。



伊香具神社の社頭
オープンでゆる〜い雰囲気で、大社の風格が感じられた



この鳥居は三輪式と厳島式の様式を組み合わせた形で、創建当時、神社前まで琵琶湖の入り江であったことを示しているのだそうだ。この独特な形の鳥居は伊香式鳥居と呼ばれているとのこと



拝殿
とても新しかった



拝殿(左)と本殿(右)



「独鈷水」
弘法大使が独鈷をもって清水を掘り当てたという伝説がある



蓮池
弘法大使が入り江に住む大蛇を沼に伏せこめたという伝説があり、その沼の名残が蓮池だとされる



伊香式鳥居越しに神社の前方を眺める
琵琶湖の入り江がここまで入っていた



神社の前面、ここは入り江だった
まさに天女が水浴びしていた場所



現在は100メートルほどの参道が伸びている



グーグルアースで作成
賤ケ岳の東南麓に伊香具神社が鎮座している
往古は琵琶湖の入り江だった



境内に「平成七年度 新嘗祭献穀供御斎田」の木碑があった
その後ろに歌碑



(あづま)の方へまかりける人に詠みて遣はしける」
思へども身をしわけねば目にみえぬ こころを君にたぐへてぞやる 伊香子淳行(古今和歌集)



詠み手の伊香子淳行は伊香具神社の祭祀一族。
送別歌で、東国に赴任する人に送ったもの。
体を二つに分けることができないので、心を貴方に寄り添わせます、云々。
伊香具の歌枕ではないようだ。







■ 伊香具を詠んだ歌を集めてみた


音にのみ聞けば(かひ)なし近江なるいかごいかで逢ひみてしがな 凡河内躬恒
「如何」と地名を重ねる、「いかで」を導く


いかご潟余呉浦曲(うらわ)に引く網の目を並べても逢はで()めとや 権中納言長方卿



いかでかはいかごの海に昔より生ひぬみるめを人の刈るべき 相模
「いかで」に続く


近江なるいかごの池いかにいかに契りし人の心なりけり 夫木和歌抄
「いかに」を導く


言はばやな知らでや人の急ぐらんいかごの浦はみるめなしとも 源俊頼











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