すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


隅田川(東京都)

東京遠征です。
月曜日の朝から東京で業務があるため、前泊で日曜に東京へ移動。
日曜の午前に大阪の自宅を出発し、午後三時ぐらいに現地到着。
念願の伊勢物語の聖地、隅田川です。
いや〜音に聞く、と言うよりも、名にし負う、隅田川。
東京スカイツリーとどちらに行くか迷ったけど、やっぱり来てよかった。
とは言え、東京スカイツリーも絶好のアングルで写真撮影ができたので大満足。

まあ、感激もひとしおですが、実際のところ普通の都会の川でした。



隅田川
(白髭橋から北を望む)



名にし負はばいざこことはむ都鳥わが思ふ人はありやなしやと  在原業平




隅田川西岸にある石浜神社を訪問しました。


「名にし負はば〜」の歌碑がありました!
文化二年(1805年)の建立。
字が見えなくなっていました。


石碑の下部には船の絵がありました。





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昔はこの神社からも富士山が見えたらしく、富士山遥拝所の跡がありました。

近年、東京に高層ビルが建ちまくり、大気汚染もあり、東京都心部からは富士山が見えなくなっているとのこと。

現在では、東京スカイツリーが東京一帯から望まれ、富士山の代わりを果たしているようです。




隅田川と東京スカイツリーと、言問橋
言問橋が右下に見えます。
まさに感動的な組み合わせ!

京成電鉄のとうきょうスカイツリー駅の
元々の駅名は「業平橋駅」


ここら辺りは正に伊勢物語の聖地です。





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<更級日記>
伊勢物語の編纂の約150年後に更級日記の作者藤原孝標の女が
父の赴任地の東国から京都へ上る途中、隅田川を超えている。

・・・ 在五中将の いざこことはむ とよみける渡りなりけり 中将の集にはすみだ河とあり 舟にて渡りぬれば相模の国になりぬ   更級日記

作者は隅田川と聞き、業平の「いざ言問はむ〜」
の歌を思い出している。(在五中将=在原業平)





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さて、隅田川と言えば都鳥。現在のユリカモメのことらしい。
ユリカモメはカモメとどうちがうのだろうか?
取り急ぎ、隅田川の川辺で更級日記のような「白い鳥の嘴と脚の赤い、シギの大きさの、魚を食べる水鳥」を探してみたが、いなかった。
時期が違うのだろうか?

さるをりしも、白き鳥の嘴と脚と赤き、しぎの大きさなる、水の上に遊びつつ魚を食ふ。京には見えぬ鳥なれば、みな人見知らず。渡しもりに問ひければ、「これなむ都鳥。」と言ふ・・・(更級日記)






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<謡曲「隅田川」>

 石浜神社から白髭橋を渡ると、そこには公園が整備されていて、ウォーキングに興じる老人が多数おられた。
古代からここら辺りは隅田川の氾濫原としてアシ原が広がっていたらしい。「あしおぎのなかを わくるよりほかのことなくて」(芦や荻のなかを分け入るしかなく:更級日記)の状況だったのだろう。
謡曲「隅田川」のストーリーは割愛するが、最後の、母親が我が子と思っていたのは夢まぼろしであって、そこにあるのは浅茅ヶ原のみ・・・の光景がここにあったのだろう。

ここに謡曲「隅田川」の舞台と伝わる木母寺があり、主人公の梅若を偲び梅若堂が建てられている。
この日、木母寺は閉まっていて、外から写真を撮った。

       
       木母寺の玄関

       
       梅若堂。建物を保護するためにガラス張りの覆い
       がなされている。(敷地外から撮影)

       
       梅若塚。

                
              近くの橋の名前は「梅若橋」
 












実に楽しい訪問でした。
次は都鳥を見てみたいです。





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