すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


住吉(大阪市住吉区)





 住の江の 岸による浪 よるさへや 夢の通ひ路 人目よくらむ 百人一首





有名な住吉大社
全国の住吉神社の総本社であり、旧摂津国の一宮。
そして和歌の神様でもある。




住吉大社に行ってきた。

南海本線住吉大社駅



駅から海側を望む。
昔はこの辺まで海だったらしい。



駅から住吉大社へ向かう。
チンチン電車が走っていた。



鳥居の向こうに反橋(太鼓橋)



橋の上
転び落ちそうだった



特殊な「住吉造」の本殿
四棟が並んでいる。



船の形をした万葉歌碑(古代の地図付き)
(全18歌)




万葉歌碑に載っていた18歌を転載

住吉に斎く祝が言と 行くとも来とも船は早けむ (多治比真人土)
草枕旅行く君と知らませば、 岸の黄土ににほはさましを (清江娘子)
住吉敷津の浦の名告藻の 名は告りてしを逢はなくもあやし (作者不詳)
住吉出見の浜の柴な刈りそね未通女らが赤裳の裾の濡れてゆく見む (作者不詳)
白浜の千重に来寄する住吉の 岸の黄土ににほひて行かな (車持千年)
住吉得名津に立ちて見渡せば 武庫の泊ゆ出づる船人 (高市黒人)
血沼廻より雨ぞ降りくる 四極白水郎網手綱乾せり濡れあへむかも (守部王)
住吉遠里小野の真榛もち摺れる衣の盛過ぎ行く (作者不詳)
住吉の岸のが根うちさらし 寄せ来る波の音の清けさ (作者不詳)
馬の歩み押さへ止めよ住吉岸の黄土ににほひて行かむ (安倍豊継)
住吉浅沢小野のかきつばた 衣に摺りつけ着む日知らずも (作者不詳)
暇あらば拾いに行かむ住吉の岸に寄るとふ恋忘貝 (作者不詳)
住吉の里行きしかば春花のいや愛らしき君に逢へるかも (作者不詳)
住吉の岸を田に墾り蒔きし稲のさて刈るまでに逢はぬ君かも (作者不詳)
住吉の波豆麻の君が馬乗衣さひづらふ漢女をすえて縫へる衣ぞ (作者不詳)
住吉の小田を刈らす子奴かも無き奴あれど妹が御為と私田刈る (作者不詳)
夕さらば潮満ち来なむ住吉浅鹿の浦に玉藻刈りてな (弓削皇子)
住吉粉浜のしじみ開けも見ず こもりにのみや恋ひ渡りなむ (作者不詳)


先に言っておくと、「住吉」と「住の江」は同じようなもの。
厳密には違うが、「明白な区別」がなされていたわけではないらしい。(歌枕歌ことば辞典)


歌枕の住吉ネタはたくさんあるが、とりあえず代表的なキーワードとしては、
「神」 ・・・ 代表的な海の神だったが、のちに和歌の神にもなった。
「松」 ・・・ 「待つ」と掛ける
「忘れ草」「忘れ貝」 ・・・ 恋を忘れる
「浪」 ・・・ 住之江の波
「寄る」 ・・・ 波が寄るで、「夜」
「住吉」 ・・・ 住みやすい


そして、住吉周辺にある地名と連携してそれぞれの地域に合った歌に続いている。
住吉に続く地名は、
 「浅香の浦」
 「粉浜」 
 「敷津浦」
 「出見の浜」
 「霰松原」
 「細江」
 「浅沢小野」
 「長居」
 「岸の黄土」
 「津守」
 「遠里小野」
 「姫松」
などがある。それぞれ個別のページを作っているのでご参照願いたい。






***





住吉は源氏物語、伊勢物語ほか色んなところに登場する。




源氏物語・・・

光源氏は須磨から無事に都に帰ることができたため、住吉へお礼参りでやってきた。
ところが同じ時に明石の人も毎年の住吉参りで海から船に乗ってやってきた。
陸路を行く光源氏一行の華やかさに圧倒されて明石の人は船の中から出られなかった云々。。。(第十四帖 澪標)
*この場面は日本画の題材としても有名



住吉参詣の際に光源氏主従が詠んだ歌


 住吉こそものは悲しけれ代のことをかけて思へば 惟光(源氏物語)
 荒かりし浪なみのまよひに住吉をばかけて忘れやはする  光源氏(源氏物語


たしか、源氏は住吉へはもう一回行ってたような気がする。








伊勢物語の方は・・・

みんなで和泉国へ行く途中、住吉の辺りを通ったので、誰かが「住吉の浜」で歌を詠もう!と言いだし、「ある男」が

雁鳴きて菊の花さく秋はあれど春の海辺に住吉の浜 在原業平(伊勢物語)
 
と詠んだところ、この歌が良すぎたからなのか、他の人々は誰も詠まなかった。(六十八段)




土佐日記では、赴任地の土佐で娘を亡くしたが、京都へ帰って来るときに住吉の沖を船で通り、住吉の有名な「忘れ貝」を摘みに行きたい(悲しい思い出を忘れたい)と詠った。

住の江に船さし寄せよ忘れ草しるしありやと摘みて行くべく 紀貫之の妻?(土佐日記)


 ・・・と、いろんな場面で住吉は登場











ずっと構想を練っているのだが、相撲の相撲番付のようなかんじで、歌枕の番付をしてみたいと考えている。
その中で「住吉」は横綱級としてノミネートしている。「吉野」や「熊野」、「須磨」「難波」などと並んで圧倒的な存在感がある。
いつか完成させて、このホームページに掲載したい。








地図のマークは住吉大社








帰りのチンチン電車。
なつかしい色。





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