すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


墨染め桜(京都市伏見区)





こんなエピソード系の古跡が大好きである。


どんなエピソードがあったのかというと、


え〜と、時は平安時代前期。
歌人の上野岑雄が、友人の藤原基経の死を悼んで、今年ばかりは桜も墨色に咲いてほしいと歌を詠んだところ、墨染寺の桜が薄墨色に咲いたという。

深草の野辺の桜し心あらば 今年ばかりは墨染に咲け 上野岑雄(古今和歌集)

その後、この辺りの地名も「墨染」となった。







エピソードU


謡曲「岑雄(みねお)
またも上野岑雄が登場。今度は深草院の崩御を悲しんで出家する。そして深草山の御陵を訪れて、また同じような歌を詠んだ。

深草の野辺の桜し心あらば この春ばかり墨染に咲け 上野岑雄(謡曲「岑雄」)

古今集の「今年ばかりは」が、謡曲では「この春ばかり」に変更されている。
すると、里の女がやってきて、「春ばかり」を「春よりは」に変えてくれと頼むというもの。


里の女としては、今年だけ墨染に咲くのでなく、今年以降ずっと墨色に咲いてほしいと希望している。


その後、どうだったのだろうか。
できれば七回忌ぐらいまで墨染に咲いてほしいのだが。















そんな墨染の桜ゆかりの地を訪問した。



■墨染寺 ・・・ 京都市伏見区墨染町741


最寄り駅は京阪電鉄「墨染駅」



墨染寺は商店が並ぶ一角にある



現在では日蓮宗のお寺だとか



これが墨染桜
訪問したのは6月で当然ながら葉桜
ソメイヨシノのような樹相だったけど、墨色に咲くのかな



石碑に由緒が書かれていた(漢文で)





その他の墨染の桜の歌


墨染めの衣うき世の花盛り折りわすれてもをりてけるかな 世継物語


墨染に咲かぬもつらし山桜花はなげきの外の物かは 新後撰和歌集


墨染に咲かぬ桜もこの春は心あればや露けかるらむ 惟宗光吉


あはれてふ色香をさとる桜木の花は面影墨染めにして 太閤秀吉






都名所図会「伏見墨染」 (国際日本文化研究センター)















満足度の高い訪問でした






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