すさまじきもの ~歌枕★探訪~ |
摺針峠(滋賀県彦根市)
「摺針(すりはり)峠」って名前からしてすごく由緒がありそうで、調べてみると、それは弘法大師に関連するときた。 簡単にまとめると、 ①弘法大師の青年時代、挫折しそうな精神状態のときに、この峠を通りかかった。 ➁そこでひたむきに生きている老人の姿を見た。老人は斧を磨いて針を作っていた。 ③その姿に勇気づけられ、その後は修行に打ち込んだ。 ④そして弘法大師になったあとに、再びこの地を訪れ、摺針明神宮に参拝した。 こんな逸話から「摺針峠」と呼ばれるようになったとのこと。 弘法大師は次のような歌を詠んだ。 |
道はなほ学ぶることの難(かた)からむ 斧を針とせし人もこそあれ | 弘法大師 |
逸話自体は「あーそうですか」という程度の内容である。 この摺針峠からの眺望は素晴らしく、広重の木曽街道六拾九次にも描かれていることから、ぜひ行きたいと考えていたところ、2017年1月にようやく訪問する機会を得た。 【摺針峠】・・・滋賀県彦根市中山町 摺針峠から琵琶湖を眺望 木曽街道六拾九次 鳥居本 (歌川広重) Wikipediaより 広重の浮世絵で、同じく琵琶湖を眺望している。 見ると、手前にも湖水があり、舟が描かれている。これは近代に干拓されるまで入り江があったためである。。この入り江があった辺りは現在の地名も「入江」であり、非常に分かりやすい。 峠の様子<連続写真> 車が走る道路からこの階段を上ったところに摺針明神宮がある。 摺針明神宮 鹿がいて、逃げて行った。 そして琵琶湖を一望できるこの場所には「望湖堂」という大きな茶屋があったらしいが、近年火事で焼失したらしい。 こんな素晴らしいシチュエーションにある摺針峠にちなんだ歌 |
心せよ行きかふ旅の諸人も袖磨針の山の懸け路ぞ | 覧富士記 |
旅衣ほころひぬれやすり針の峠にきてもぬふ人のなき | 一条兼良 |
南行数里下陽坡 西望平湖遠不波 孤島峻然何所似 瑠璃万頃一青螺 |
一条兼良 |
この図会を見ても、湖が山の麓まで迫っている。 上述の通り干拓の前は入り江が広がっていたようだ。 |