すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


高砂(兵庫県高砂市)






高砂や この浦舟に 帆を上げて 帆を上げて 月もろともに 出で潮の
波の淡路の 島影や 遠く鳴尾の 沖過ぎて はや住江に つきにけり
謡曲
「高砂」


謡曲「高砂」であまりにも有名な一節。
私事ながら、1995年に私が結婚式を挙げた際に、亡父の友人がどうしても「高砂」を謡いたいと言い出し、断ることもできずに、結局のところ、おしゃれな雰囲気の結婚式のさなかに突如おごそかな謡曲「高砂」が披露されて、それはそれで楽しい出来事であったという思い出がある。
そう言えば、昔は結婚式に「高砂」は付き物で、これが始まる終盤はみんな酒が回った頃で、全体的に騒々しくなっていく中、ほとんど誰も聞いていないといった光景が普通の結婚式であった。


まあ、高砂の松が「相生の松」と言って、二本の松が根元から分かれて伸びているような松のことで、それは夫婦和合の象徴だと知ったのは、ずいぶんと後のこと。




そんな夫婦愛、理想の長寿を表わした謡曲「高砂」の聖地へ行ってみた。




【高砂神社】 ・・・ 高砂市高砂町東宮町190


楼門。
下の地図でも分かるように、ここは加古川の三角州の上。
こんな不安定な土地に太古の昔に神社が建てられて、今でも同じ場所に建っているとは本当にすごいことだと思う。



境内に入った瞬間から、荘厳な雰囲気が漂う。
他に人がいなかったためかも知れない。



え〜と、これは何だたっけ?拝殿だったような。



そして、これは能舞台!これなしに高砂は語れない。



現在、新築して改装中のようだ。



高砂の松、こと相生の松。
根元からしっかり二本に分かれている。



そして境内にあったこれは五代目の相生松。



しっかりと根元で二本に分かれている。



柵で囲われていたこの松も根元で二本に分かれている。
これは六代目なのかな。



枯死した三代目相生松は霊松殿に保存されていた。



中を覗いてみると、まだ生きているような松の木が見えた。



しっかりと根元から二本に分かれていた。
まさに夫婦和合の象徴である。



尉姥神社
なんと謡曲「高砂」の登場人物である尉と姥の老夫婦を祀った神社。

「お前百まで、わしゃ九十九まで」と、昔は夫婦で長寿を祈ったが、21世紀のこの世の中ではそんな長生きをしたら大変である。



おっと、高砂神社会館の壁には尉と姥の老夫婦の絵が描かれていた。




こんな高砂を詠んだ歌


たれをかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに 藤原興風(百人一首)


高砂尾の上の桜 咲きにけり 外山の霞 立たずもあらなむ 百人一首


高砂をのへをゆけど人もあはず山ほととぎす里なれにけり 西行


浪にしく月のひかりを高砂尾の上のみねのそらよりぞ見る 西行


一木かと見れば二木二木かと見れば一木を雌雄のこの松 大国隆正




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ところで、境内にあったこの歌碑、いったい誰のどんな歌なのか分からないまま写真を撮ってきた。








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播磨名所巡覧図会「高砂社」 (早稲田大学図書館)

基本的に現在と変わっていないようだ。










20年以上前の自分の結婚式のことを思い出しました。





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