すさまじきもの 〜歌枕探訪〜


高須(大阪府堺市)




今までに堺市内で三か所、合計7年間ぐらい働いていたが、高須って町については、全く知らなかった。
現在ではチンチン電車の駅があるが、かなりマイナーな場所。
そんな高須についての和泉名所図会の説明文。



【和泉名所図会】「遊女地獄」
遊女地獄むかし、當津北荘高須に住し也。今も遊女町也。十軒許あり。
此遊女つらつらおもふに、うき川竹のながれの身となる事、前の世の戒行つたなきゆへなり。未来も地獄にやおちざるらめ。せめて懺悔のため、名を地獄と付て、呵責の罪を今の世にてのがれ、後の世は安養浄土に生れ、美しき佛とならんと、口には風流の唱歌を謳ひながら、心には佛号をとなへて、弥陀のちかひを願ふ。
此名世に名高く、殊に国色の美艶にて、容は柳の糸のたをやかに、肌は玉の匂ふがごとく、遠近ここに群ければ、一休和尚もここに来り、遊女を見給ひて、

ききしより見ておそろしき地獄かな 一休
こころの鬼に手引せられて 遊女地獄
一休和尚これを聞給ひ、真に此遊女は三乗四諦の道に通ずよと、礼をなし去給ふとぞ。

高須の遊女町に来て

南北のみな鳥ともがとらるるはただ一もつのたかす也けり 半井卜養






要するに、

■堺市の高須の町は昔は遊郭であった。

■ある遊女は、名前を「地獄」とつけて、逆説的に未来の安寧を願った。

■その遊女は美貌で有名で、各地から客が来た。

■噂を聞いて、一休和尚もここにやってきて、からかいの上の句を詠んだところ、予想以上にきっちりと下の句を継がれてしまった。

■一休和尚は、この遊女は悟りの域に達していると感心した。

こんな感じである。




和泉名所図会に挿図がある。「遊女地獄」

早稲田大学図書館



どうでもいいのだが、同じ江戸時代に出版された堺の地誌「堺鑑」では、地獄が返した句の内容が違っている。
ききしより見ておそろしき地獄かな 一休
いきくる人もおちざらめやは 遊女地獄
みんな地獄に落ちない人はいないと、これでは悟りを啓いた人の返句ではない。





そんな高須に行ってきた。


チンチン電車、南海阪堺線に「高須神社」駅がある。



町の中の狭い敷地に高須神社はあった。



和泉名所図会「高須稲荷社」 早稲田大学図書館

昔はこんな感じだったようだ。




これが社殿。
境内社として稲荷神社が祀られている。




町の様子。言われてみれば遊郭の名残もあるかもしれないが、空襲とかもあったので、よくわからない。




すぐ真横の公園。昔の堀を埋めた跡。




















期待していた程度の感動がありました。





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